第3回【看護師不足】黒岩祐治(神奈川県知事)プレミアムインタビュー

黒岩祐治のプレミアムインタビュー

第3回 【看護師不足】

全国的に看護師不足と言われています。神奈川県の看護師不足状況はいかがですか。

 人口10万人あたりの看護師数は全国平均では1089.2人なのですが、神奈川県は736.8人で、全国最下位なのです。これまでずっと看護師の問題に携わってきた私が知事になったからには、いつまでもこのような状態ではいけないと思っています。

知事は神奈川県で看護師が不足している理由はどのようなものであるとお考えですか。

 神奈川県は人口が急増した県で、全国で東京に次ぐ2位の人口がいます。905万人という人口はスウェーデンとほぼ同じ規模なんですよ。人口急増に対して、看護師養成がついていけなかったというのが看護師不足の理由の一つでしょう。

看護師不足を解消していくためには、国、県、病院などはどのような対策を行っていけばよいと思われますか。

 看護教育全体の見直しが必要です。国家試験に合格し、看護師の資格を得て、医療の現場に出て行った看護師のうち10%が1年以内に離職しています。これは「医療の現場で何もできない」というリアリティショックが大きな原因になっているようです。10%の医師が1年以内に離職するという事態はありえませんから、看護師の早期離職の多さは異常と言えるでしょう。リアリティショックを起こさせないためには看護教育を、現在の座学中心から臨床重視に変えていくべきです。未だに古い講義ノートを使い続けている看護教員もいるようで、教員側も反省しなくてはいけないでしょう。
 看護職は人間を相手にする仕事です。人間に向き合って、どのように関わるのか、特に高齢者の望みや要望をどうキャッチするのか、そういうことを考えられる看護師を育てていきたいです。そこで、神奈川県では「マグネットかながわ看護」という方針を打ち出し、できる限りの支援をしていきたいと思っています。「神奈川県の看護教育は良い」という旗を立て、神奈川県内の看護学校に受験生が集まってくる状況を作り上げます。
 一方、潜在看護師の問題にも取り組み、看護師不足の克服に繋げていく所存です。資格やキャリアを活かし、病院に戻りたくても、医療の進歩が速いために、自分の技術に自信が持てないという潜在看護師は少なくありません。そういった方々に再教育の場を与え、医療現場に戻っていただくきっかけを作れたらと願っています。
 また、子どもを育てながら職場復帰を目指す看護師のために、院内保育所の整備も進めていく予定です。

転職、復職をお考えの看護師の皆さんへメッセージをお願いします。

 看護の世界を20年見てきて、准看護師問題は未だに解決していませんが、それ以外の面では大きく変わったと思っています。看護の質のレベルは格段に向上し、より魅力ある仕事になってきました。その要因の一つに看護師の高学歴化があります。20年前は10校程度に過ぎなかった看護師養成の4年制大学が今は200校を超えています。看護の仕事はマニュアルではなく、人間相手だからこそ奥深いんですね。そこに向き合うことで、仕事の楽しさや面白さが見えてくるはずです。「患者さんのためになる」と実感できれば、遣り甲斐に繋がります。社会的地位や財産があっても、病気になれば、人間は弱いです。弱くなった人に寄り添い、支えることができる看護師は素晴らしい仕事だということを忘れないでほしいですね。看護師は社会から大きなニーズがありますので、これからも看護師に挑戦したいという人が増えてくることを願います。
 これまで、看護師は自分たちの仕事を「きつい、汚い、危険の3K」などと言って、悪いイメージを振りまいてしまった面があります。これからはいい仕事だということを積極的にアピールして、メディアにも看護師の素晴らしさについて取り上げてもらうようにすれば、「私も看護師になりたい」という人たちが増えるはずです。私は「感動の看護師最前線」で現場に光を当て、多くの共感をいただき、看護師のステイタス向上に寄与できました。
  今後は介護の世界にも光を当てていきます。施設で働いている人に話を聞きますと、「面白い、楽しい」と言うんですね。高齢者から「ありがとう」と言われるなど、面白さや楽しさの要素はあるはずなのに、仕事の良い面が社会に伝わらず、封じ込められているのはかつての看護師と同じ状況です。メディアに取り上げてもらったり、あるいは「看護賞」のような賞の授与なども視野に入れて、介護に携わる方々の支援もしていくつもりです。

プロフィール

昭和55年 3月 早稲田大学政経学部卒業
昭和55年 4月 (株)フジテレビジョン入社
平成21年 9月 同退社
平成21年10月 国際医療福祉大学大学院教授
平成23年 3月 同退職
平成23年 4月 神奈川県知事に就任

フジテレビジョンでは3年間の営業部勤務を経て報道記者となり、政治部、社会部、さらに番組ディレクターを経て、昭和63年から「FNNスーパータイム」キャスターに就任する。その後、日曜朝の「報道2001」キャスターを5年間、務めた後、平成9年4月よりワシントンに駐在する。
平成11年から再び「(新)報道2001」キャスターに復帰する。自ら企画、取材、編集まで手がけた救急医療キャンペーン(平成元年~平成3年)が救急救命士誕生に結びつき、第16回放送文化基金賞、平成2年度民間放送連盟賞を受賞する。
その他、人気ドキュメンタリーシリーズの「感動の看護婦最前線」、「奇跡の生還者」のプロデュースキャスターを務める。「感動の看護婦最前線」も平成5年度と14年度の2度にわたって民間放送連盟賞を受賞する。さらに、日野原重明氏原案のミュージカル「葉っぱのフレディ」のプロデュースも手がける。
平成21年9月、キャスター生活21年半、「(新)報道2001」15年あまりの歴史に幕を閉じ、フジテレビジョンを退社する。国際医療福祉大学大学院教授に転身するが、神奈川県知事選立候補のため、辞職する。
平成23年4月23日に正式に神奈川県知事に就任し、「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けて全力で取り組んでいる。

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