第23回 スーパードクターエッセイ/水沢慵一

スーパードクターエッセイ

スーパードクターエッセイ

水沢慵一
医療法人社団 五の橋キッズクリニック 理事長(院長)
東京医科歯科大学医学部小児科講師、同付属病院臨床准教授
<プロフィール>

 
バックナンバー

 

 

第23回 「大地震から思うこと」

みなさん、いかがおすごしですか?
 急に寒くなったり、雨がふったり、不安定な気象がつづきますね。
 さて、今回は、中国の震災から感じたことを書いてみたいと思います。一向に事態は収拾するにみえない中国の大震災ですが、被害の実情はどこまで報じられているのか、私たち外国人にはなかなか不透明です。おそらく、中国国内でも情報は相当に規制されているのでしょうけれども…。
 そんな折、最近ちょくちょく目にするのは「地震前に見られた動物の異常行動」という記事やニュースです。現地の新聞では、さまざまな動物たちが地震の前に、通常とは異なる行動をとっていたという記事を伝えています。

以下のリンクは、時事通信社のニュースサイトに掲載されていたものです。

2008/05/18-16:42 ダチョウなど、大地震前に異常行動=予知研究の動物園で確認?中国
【香港18日時事】香港紙・東方日報は18日、動物の行動観察による地震予知を研究している中国広東省の深セン野生動物園で、12日午後に四川大地震が起きる直前、ダチョウが集団で狂ったように走り回るなど異常な現象があったと報じた。
 ダチョウが走り回ったのは12日朝。このほか、同日昼には、ゾウが鼻でしきりに鉄製の門をたたいたり、普段はおとなしいカモシカが不安そうに延々と歩き続けたりした。また、カメが水に入ろうとしない、ヘビが寝床の箱から出て来ないといった異変も見られた。地震発生後、動物の行動はすべて平常に戻ったという。

こちらは、AllAboutからの情報:
http://allabout.co.jp/living/bosai/closeup/CU20031009A/index.htm
http://allabout.co.jp/living/bosai/closeup/CU20040801A/index.htm

 こういったことは、大きな地震があるたびに報じられ、人々の興味の対象となります。こういった感覚は、私たち大人が理性を優先させて社会生活を営んでいると、徐々に磨り減り、閉ざしていってしまう感覚です。
 しかし、子ども達をみていると、地震予知の動物達のようにはいきませんが、実に繊細なセンサーを持っているなぁと感心することがしきりです。
 子どもや赤ちゃんは、実に繊細な感覚をもっています。ただ、子どもといえども大人と同じように「家族」や「幼稚園・小学校」といった社会的な存在でもあるので、常にその繊細な感覚を発揮するというわけでもありません。感じたことを心の中に留めておいたりする、理性的な部分ももちあわせているのです。そういう「自分が感知・認識していること」と「周囲の大人(保護を与えてくれる大人)が認識していること」の間にズレが生じるとき、小さな大人である子ども達は不安や居心地の悪さを感じます。私たち大人は、周囲とのズレを感じても「わたしは私」という感覚を習得していれば、不安や居心地の悪さを感じなくてすみますが、子どもの時代にはそう簡単に自分の差異を受け容れられるときばかりではないのです。

 小さな赤ちゃんの頭のてっぺんをそうっと触れてみると、ぺこっとくぼんだ部分があります。ここは「大泉門」と呼ばれ、成長にともなって閉じられていき、大人になってストレスがかかるとガチガチに固くなります。また、皆さんも経験があるかと思いますが、疲れているときに頭の表面を押していくとピンポイントでへこんで痛みのある部分があります。そこは、何枚かの骨がパズルのように組み合わさって出来ている頭蓋骨の縫合部分が緩みすぎているのです。逆に、ブヨブヨと頭皮にハリが偏っているところは、縫合部分が詰まって行き場のなくなった頭皮が偏って集まっているのです。
 頭蓋骨というのは、呼吸に合わせて常に目に見えない程度動いています。しかし、精神的・肉体的な疲労や緊張が長く続くと、頭蓋骨がきちんと動いてくれなくなって、緩みすぎたり、緊張しすぎたりするのです。
 話を元に戻しましょう...
「大泉門」の下には「松果体」という高感度センサーが入っていて、赤ちゃんたちはこのセンサーで周囲の情報を感知します。人間は「皮膚」という最大面積の感受センサーとともに、特に小さいころには「松果体」を使っているのです。ちょっとした周囲の雰囲気の変化を敏感に読み取って、赤ちゃんが不安そうに泣き始めたりするのは、高感度センサーをもっているからこそなのです。
 家族にストレスがかかって、それがしばらく続いたりすると、子どもはその変化に影響されて、見事なまでに不調を訴えます。肉体的な風邪だったり、その他の炎症だったり、チック症状だったり、はたまた精神的な変化だったり。家族という集団が崩壊しないように、子どもは自分のエネルギーを変化させて、偏った力を放出させようとするのではないかと思います。もちろん、それは、子どもにとって、自分を保護してくれる場所がちゃんと存続してくれていなくては困るからなのです。
 子どもは「よわく」「もろい」ものだと言われますが、いえいえ、どうして、子どもとはある意味において実に「つよい」生き物なのでしょう。自分の状態を敏感に変化させて全体の均衡を守ろうという強さは、大人の場合には、なかなか発揮できることではありません。本当の「つよさ」とは、どんな状況にも適合する「しなやかさ」なのです。周囲の状況が変化にとみ、ストレスのある場合、子どもは実に柔軟に自分自身を病にさせることで、家族のエネルギーの矛先を変化させ、均衡を回復させようとします。
 それはまるで、チベット問題が勃発したあと、この大きな問題がどう収拾されるのか世界中のだれもが皆目見当がつかなくなっていたときに、地球全体が地震という形でエネルギーの矛先を変えさせた…その変遷ととても似ているなぁ…と思うのは、私だけでしょうか。
 地震の被害で亡くなられた皆様の冥福をお祈りします。

 こんな天災のかたちで均衡がとられるようにならねばならないほどに、地球全体はなにかゆがんできているのかと心に気になりながらも、私のできることは、日々の診療。子どもたちやその周囲の社会が呈する大自然との相似形を感じながら、私は私の仕事にあたることにしましょう…。
 うぅーん、そう思うと・・・だから、小児科ってやめられないんですよね!
 来月には、そろそろ雨の季節になってきますね。雨や水のことなどお話できるといいですね。
 みなさん、身体に気をつけて、お互いがんばりましょう!





ピックアップバナー
コンテンツ
  • 黒岩知事インタビュー
  • ホスピタルインフォ
  • ビギナース
  • Re:ナース40

Cafe de Nurseおすすめコンテンツ


働きやすい職場を作るリーダー力

黒岩祐治プレミアムインタビュー

ホスピタルインフォ

ホスピタルインフォ