まさに光陰矢の如し…みなさん、おかわりありませんか? 寒い、寒いといっても、こんなに暖かい年末はこれまでないかもしれません。けれども、小児科をはじめ、社会全体において「ノロウイルス」が蔓延して流行病となっています。
大人に比べて免疫力の低い子どもたちにとっては、こういった伝染性の病気は本当にやっかいです。私のクリニックにおいても、この冬には、午前中の診療だけで、20人以上の子どもたちが待合室で点滴を受けるという、まるで「野戦病院」のような日が続きましたが、やっと落ち着きつつあるところです。来年は少しでもこの波がおちついてくれることを願いますが……。
さて、当院では統合医療の一環として、アロマセラピーを導入してようやく半年が経とうとしています。小児科での導入実績が実際的に少ないので、試行錯誤を繰り返しながらやってまいりました。本当にあらゆる点において試行錯誤ではありますが、その中の大事なひとつに、いま猛威を振るう「ノロウイルス」を始めとしたウイルス・細菌などに対する抗菌抗ウイルス効果を挙げることができます。代替医療・自然医療と呼ばれる分野の伝統医療のアプローチのユニークな点は、「ウイルスや細菌をやっつける」という効果のみならず、「それを利用する人間の免疫力を全体的に向上させる」という西洋医学とは異なったアプローチをもつことです。
たとえば、実際的に代替医療・自然医療などによりその人の居る環境が良化された場合に、結果的にその人体の免疫力が向上してノロウイルスに負けない体内環境が出来上がる引き金になるということが大いに考えられるからです。
通常、西洋医学では、「ウイルスを殺す」から「感染しない」のだというベクトルの向きがあります。しかし、伝統的な医療の多くは、「ウイルスに負けない体」が優先事項であり、極端なことを言えば「ウイルスが生きていようと死んでいようと問題はない」ということになるのです。
また、私のクリニックでは、保湿のクリームを時実費でおわけさせていただいております。導入当初はリピーターとなってくださる患者さんがいらっしゃるのかどうかというのが不安点でしたが、おかげさまでより大きな容量を求めてくださる声が上がってきたり、リピートしてくださる患者さんが続々と出てきました。
このクリームの好評を見ていると、患者さんたちは私たち医師よりももっと敏感に、「全体的な免疫力の向上」を指向されているのではないかと思います。私たち医師は、ある種の職業病的なものかと思いますが「健康v. s.ばい菌」といったような、悪者探しに慣れすぎているのかもしれません。「お腹の中で寄生虫(さなだ虫)を飼うべし」と言われた、東京医科歯科大学 藤田教授がよくおっしゃっていましたが、本来わたしたち人間は現代の医療において「敵」と見做されるものたちと共存できるし、共存することがその人の体内環境を良化させたり、向上させたりということにつながるのではないかと思うのです。アレルギーの分野でも「幼児期に衛生的環境になれていると、アレルギー疾患の発症が多い」という衛生仮説がさかんに議論されています。
「若いうちの苦労は買ってでもしろ…(笑)」ではありませんが、苦労をことごとく避けてくると人生における耐性ができないのと同じで(ちょっとちがうかな!?)、やはり体も様々な菌やウイルスに刺激され、体内にも常在菌や常在ウイルスなどといわれて初めて肉体にもバリエーションが出てくる…それが結果的に肉体の個性につながり、肉体の個性がその人の個性となる…そんな壮大な想像をまで馳せることが出来るのです。
ノロウイルスから、ずいぶん話が飛躍したように思われるかもしれませんが、そんなことを思いながら日々診療に励む毎日です。
これまで、小児科という狭い領域において、当初は対症療法的に「患部に塗りさえすれば効く」という考えであったものが、今お渡ししているクリームの反響によって、私の考えは変化してきました。
今お渡ししているクリームは、保湿という目的の性質から広範囲に塗布できるようなやらわかな性質に仕上げてあります。そうすると昨今のベビーマッサージブームと相まって、赤ちゃんやお子さんに対して、当院のクリームをつかってベビーマッサージを行う親御さんが増えているのです。
ひょっとしたら、もし、現行の保湿クリームがもう少し固めでただ単に患部に塗りさえすればよいというようなものであれば、リピートしてくださる患者さんも少なかったかもしれません。クリームの薬効性が「くすり」として効き、それと平行して「癒し」としての「触れあい」マッサージがある…という二重の効果を、現行のクリームは結果として導き出すことができたのです。もちろん、クリームの試作の段階から、伸びがよくマッサージにも使えるものを作るという方向性だったのですが、実際にこれを使ってマッサージをするというユーザーの数はまったくの未知数でした。おそらく、二重の効果というのは、単純に二倍というのではなしに、よくあることですが、二乗の効果となっているのではないかと自負しています。…特に、ユーザーは感度の高い、子どもたち。そして、隠れた本質的なユーザーはその母親と父親です。小児科という入口の狭いマーケットに隠された懐の深さも垣間見ながら、次への思索をめぐらせることにしましょう。
うぅーん、そう思うと…だから、小児科って、やめられないんですよね!
社会全体が年末で慌しくなります。また来年もみなさんにとって実り多き一年でありますように! お互い頑張りましょう。