vol.28医療法人 財団厚生協会 東京足立病院
当院は1958年9月の開設以来、「地域のニーズに応える医療」と「職員の生活の保障」を経営理念として、地域精神医療体制の充実を図ってまいりました。21世紀医療に向けて、「安心と満足の医療と福祉の提供」を新たに経営理念に加えましたが、これは精神医療のみならず、老人福祉事業における治療と療養環境を21世紀にふさわしく飛躍的に改善した新中央棟を完成させることができたからです。
今後、精神科急性期治療におきましてはEBMに基づく上質で効率な医療の提供を、そして精神科療養棟におきましては生活習慣病に対する積極的な予防とQOLを重視した生活障害の改善を当面の目標といたしまして日々努力を積み重ねる所存です。
また、併設されております足立老人ケアセンター(介護老人保健施設)、訪問看護ステーション保木間、足立居宅介護支援センター保木間、指定居宅介護支援事業者保木間、ホームヘルプサービス保木間、そして老人デイケア部門と連携し、地域の高齢者への福祉と介護の支援体制強化と入所から在宅までの一貫した福祉と介護体制を構築しております。
また高齢化の進む外来患者様へのデイケアや訪問看護を中心とした地域コミュニティケアの実践にも積極的に取り組んでおります。東京足立病院における安心と満足の入院治療機能、大規模デイケアを中心とした外来部門での地域コミュニティサポート機能、老人保健施設を中心とした入所から在宅までの一貫したサポート機能、以上の三要素を包括した総合医療・福祉・介護施設への大いなる飛躍を目指しております。
精神科の急性期治療病棟(60床)・回復期病棟(60床)・療養病棟(160床)として機能分化を行い、心の疾病のための治療やリハビリテーションの強化、療養環境の改善に努めている。そのほか、精神科専門病棟としてアルコール精神疾患専門病棟(50床)と老人性認知症疾患療養病棟(60床)があり、内科の入院部門として一般科療養病棟(60床)も合わせて、全部で450床を提供している。
このうち、急性期治療病棟では3カ月以内の早期社会復帰を目標に集中治療を実現し、回復期病棟や療養病棟では院内の作業療法センターと連携して、能力障害や生活障害に対するリハビリテーションを積極的に行っている。退院後の外来受診やデイケア、および訪問看護・介護あるいは社会復帰施設などが一貫して継続する包括一貫医療体制を強いており、アフターケア機能も整っている。
昭和40年代から積極的な病院地域精神医療に取り組み、外来診察(精神科5診・内科1診、ほかにアルコールや老人外来などの専門外来)、精神科デイケア(平日大規模3単位170名)・デイナイトケア(1単位30名)、訪問看護、訪問介護などの外来部門の充実を図ってきた。入院医療中心から地域医療併立への転換を実践し続けている。
身体合併症対策を重視し、最新のヘリカルCTとTVレントゲンの画像診断室、臨床検査室、歯科室、身体データ管理室を装備している。
日本のアルコール消費量は年々逓増しており、それにともなってアルコール依存症などのアルコール関連疾患は社会問題となっている。東京足立病院では東京都の支援を受け、アルコール精神疾患専門病棟を開設しており、専門病棟・専門外来・集団療法室・運動療法室などの治療システムを東京都民に提供している。
病棟は50床の男女混合病棟で、ワンフロアに閉鎖病棟(21床)と開放病棟(29床)の構成となっており、第I期治療として解毒・離脱症状などの身体面の治療、第II期治療として、アルコール・リハビリ・プログラム(ARP)を行い、断酒に向けた本格的な治療に取り組んでいる。
ARPは原則3カ月の入院で、ミーティングを主とするプログラム参加、患者自治会(プログラム委員)への参加、作業療法や病棟サークルへの参加などのリハビリテーションとなっている。病棟ミーティングでは、近隣の自助グループやアルコール・薬物リハビリ施設のデイケアに参加する院外プログラムもある。アルコール専門外来やアルコール予防教室、家族ミーティングも開催している。
職場や学校、家庭などの人間関係で様々なストレスや葛藤を抱え、こころや身体の調子を崩した患者(うつ病、摂食障害、不安障害、パニック障害、PTSDなどのストレスに関連した問題に悩む患者)が日常生活を離れ、ゆっくり静養できる病棟して開設された。患者一人一人の悩みや問題に応じた入院治療計画を患者とともに考え、それに基づいて医師・看護師・薬剤師・作業療法士・臨床心理士・精神保健福祉士・管理栄養士・ケアワーカーなどの他職種によるチーム医療を行っている。
高齢者の加齢にともなう身体や心の障害に対し、老人外来・理学療法室・内科療養病棟(60床)・老人性認知症疾患療養病棟(60床)と、併設の介護老人保健施設足立老人ケアセンターを中核とする在宅支援機能の連携による包括的な高齢者医療介護システムを構築している。
「急性期治療病棟は今、改装を行っていて、2010年の春からスーパー救急病棟に変わります。このような病棟は現在、都内では4カ所しかありませんが、それに次ぐ施設になる予定です。完成すると、半分が個室で、看護師の比率は2対1となり、密度の濃いケアができるようになるでしょう」(森はなこ看護部長)
東京足立病院の理念・方針と看護部各活動の整合性を図りつつ、病院の主たる使命である「医療福祉サービス」のよりよい提供を実現するために精神・老年看護・介護の専門性を発揮できる看護職員を育成する。
看護部の副主任以上の管理者を対象に、①病棟管理、②組織管理を中心とした講習会を行う。
東京足立病院における看護管理方法と手順を、現任および新任者を対象として、実践的に指導する。
実習指導者を対象に、東京足立病院での実習生評価の視点の統一や問題点の検討などを行う場として開催される。実習生については、学校の教育方針に基づいた効果的な実習を行う。
全職員を対象に、勤務内での研修会を開催する。病院運営に欠かせない内容を各委員会とリンクして企画運営していく。(安全管理、感染予防対策、防災管理、行動制限最小化、医療ガス、個人情報保護法、人事考課、労基法の関連)また、診療・看護・介護行為と診療報酬診との関連性や医療サービスの考え方、記録の重要性など、より実務的な内容とし、病院が職員に求めるものを伝達できる場となっている(患者満足調査、接遇、信頼関係、禁煙教育など)。
日常の業務を行う上での基本的な知識を有し、指示された範囲での定型業務が可能になることを目指す。医療福祉事業の従事者としての基本的なこころ構えを保有し、医療福祉事業の従事者に求められる社会人としての常識と接遇姿勢を形成する。
新入職者を対象として、年1回、病院の理念・方針の解説と病院の実践および新入職者に求められるものについて伝達する。
全職場・全職員を対象として、開催、実施する。それぞれの職場の学会担当者の選出を行い、その担当者と開催に向けたマネジメントを担う。看護部は看護部教育委員(前任を含む)会と職場長で調整集約する。
職能資格制度導入に向けて、全職員への浸透を図るためのプランニングや職能要件書の作成、職種による各人の仕事を行う能力=職務遂行能力の等級評価のテキスト作成、および役職者=考課者を育成するための講習会を実施する。
人事考課の考課者としての適性を満たすため、新人事制度検討委員会が主催して研修(副主任以上が対象)を実施する。
「教育委員が中心となり、毎月、看護部と病院の院内教育研修を行っていますので、最低でも月に2回は全体の研修があります。また希望者には不定期で月2回の自主勉強会を催し、精神科についての勉強を主体とした基礎の学習などを行っています。現場では、新人に先輩ナースがついて、オリエンテーションをしたり、相談に乗ったりなど、指導をする体制が整っていますので、安心していらっしゃって下さい」(森はなこ看護部長)
母は「女性も自立すべき」という考えで、「資格があれば一生働けるし、手に職をつけていれば何かあっても困らないので、資格を持ちなさい」とよく言っていました。そこで、自分でも保母さんや学校の先生などいろいろ考えていましたが、周囲から看護師を勧められ、私も「人のためになる仕事をしてみたいな」と思ったのが、この職業を目指すようになったきっかけです。
高校卒業後は両親から「看護学校に行きたいなら、自分で自活して行きなさい」と言われていたので、東京に出て、一般の病院で働きながら学校に通いました。東京足立病院に入職したのは看護学校の同級生に誘われたからです。1995年にアルコール依存症の病棟を立ち上げる準備のために入職しましたので、今年で14年になりました。
精神科は身体のことを中心に看るわけではありませんが、心だけを看ていても不十分で、両方一緒に看ることができる科だと思います。また、いい看護にあたってはいいコミュニケーションが最も大切ですので、自分の人間性やこれまでの経験を全て生かせる場所ですね。患者さんと人間対人間で関わることができ、それが精神科看護の醍醐味、やりがいにもなっています。さらに、患者さんから教わることもとても多く、そこから看護師としても人間としても成長できる部分がとても大きいのではと思っています。
知識や技術はある程度の基礎があれば入職してから覚えることができるので、当院には人間が好きな人に是非、来ていただきたいと思います。人が好きだったり、人間を好きになろうと努力している人だと、患者さんやそのご家族への対応がスムーズにいきます。誰でも人に好き嫌いがあるのは当然ですが、少なくとも関心を持つようになってほしいですね。関心がなければ必要な観察ができないし、大事なことを見落としてしまうからです。人が好きな人だと、精神科の看護は向上していけると思いますので、是非そのように努力していただきたいですね。
東京足立病院は、入院から退院、在宅まで様々な分野がありますので、精神科だけでなく、老人介護や在宅介護を希望する方でも、部署を選んで、勤務していただくことができます。精神科は看護の基礎となるコミュニケーションを学ぶのに格好の場所です。また技術に関しては、精神科だから勉強できないということはありません。もちろん最新医療や高度医療についてはそうした機械や手術があるわけではないので、学ぶことはできませんが、点滴などの基礎的な技術に関しては一通り経験することができます。当院の看護師は中途採用の方も多いのですが、コミュニケーションの力も身に付け、基礎的な看護も同時に勉強できるという意味では、若いうちから精神科に勤務するというのも一つの方法ではないかと思います。
もともと精神科に行きたかったのですが、地方に住んでいたので、東京の病院のことが全く分かりませんでした。そこで、インターネットで調べると、「患者様が選ぶ精神科のベストテン」という記事が載っていて、東京足立病院が上位にランクされていました。その後、アポイントを取って、面接を受けたのですが、第一印象からとてもよく、即、決めさせてもらったという感じです。看護学校に通っていた頃は、精神科には閉鎖的なイメージがあったのですが、ここはとても開放的で、建物もきれいです。スタッフの皆さんも、明るく挨拶をしてくれて、これまでの精神科のイメージが覆されました。
患者様の入退院が頻繁にあり、一人一人のお顔やお名前、症状をきちんと把握しなければならないので、大変です。ただ、急性期病棟は措置入院など、様々な入院形態も勉強できるし、これからスーパー救急も始まるので、とてもやりがいがある病棟だと思いますね。
私は一般企業に勤めてから看護学校に入ったので、病院勤めが初めてで、身体的な症状への対応に慣れていない点ですね。精神科では患者様も訴えることができないので、私たちの気づきが大切です。したがって、精神的なことに加えて身体的な変化も察知していかなくてはいけないので、一生懸命、勉強しているところです。
周りには尊敬できる先輩がたくさんいらっしゃるので、そういう方たちのように、精神面と身体面の両方に対応でき、全身的に看られる看護師になりたいですね。
急性期病棟で本当によかったと思うのは、これぞチームナーシングという感じで、皆がサポートをしてくれる点です。会社勤めをしていたときは「今日は行きたくないな」と思う日が必ずあったのですが、ここでは全くそういったことがありません。その意味でとても人に恵まれていて、働きやすい職場だと思います。これからスーパー救急も始まって様々な勉強もできますし、皆のサポートもありますので、不安に思わずにチャレンジしてみて下さい。
もともと大学病院の救急部門にいたのですが、そこの患者さんは精神疾患から引き起こされる様々な弊害によって運ばれてくる方がとても多かったんです。また、ごく普通の健常者も入院をすることによって、何らかの精神症状に悩まされることがあります。そんなことから精神科に興味を持つようになり、将来は精神科で働きたいと思うようになりました。この病院を選んだのは、親戚がこの近くに住んでいて、評判を聞いていたのと、急性期や慢性期、介護老人保健施設もあるので、ケアマネージャーの経験も生かせると思ったからです。
プリセプターの方が最初に細かい業務などを教えてくれて、ほかのスタッフも分からないことなどあると、いつも快く指導してくださいます。あとは院内研修と看護部の研修、自主勉強会などが月に数回ありますので、教育体制はしっかりしていると感じています。
救急部門だと、モニターがあって、心電図などの機械が症状を教えてくれる安心感がありますが、精神科では患者さんの行動や表情など細かい変化を普段接する中から察知していかなければいけません。そういった点が難しいと同時に、やりがいを感じる部分でもありますね。
今は急性期の勉強をさせていただいているので、10年後ぐらいには慢性期の患者さんの看護もしたいですね。精神科の看護で経験を積んだ後はケアマネージャーなどの経験をもとに、地域に根付いた活動を新たにやっていけたらと考えています。
vol.28医療法人 財団厚生協会 東京足立病院