第35回 ナースは見た / 医療現場の裏側!?

第35回  カルチャーショック☆ vol.1

今回は現職に就く為に、看護師を辞めて学生生活を送っていた時のお話です。

看護師を辞めたと言っても、学費と生活費を稼がにゃならんので進学早々派遣で夜勤のみの看護師バイトを開始。

100床弱の小さな病院に勤務させて頂く事になりました。
同僚の方々は勤務年数10~20年とベテラン揃い。
それに引き換え、看護師歴3年、肩書は学生、おまけにすこぶる童顔の私。
まぁ言わずもがな、しょっぱなからナメられまくりです。

ヘモかアッペのオペが月に一件有るか無いかの、「超急性期病棟」の看護師さん達に。
そのクセ、都合のイイ時だけやたらと頼って来る素晴らしきベテラン看護師さん達。

ある晩、私が仮眠室で休憩していた時の事。
カーテンの向こうから聞こえて来る猫撫で声に飛び起きました。

「おやすみのトコロごめぇ~ん。○○さんの採血がどうしても取れなくて~。お願いできる~?」

あー、はいはい。
と、快諾して患者さんのベッドへ向かおうとする私にかけられた言葉に、しばし時間が止まりました。

「一時間トライしてみたんだけど~、どうしても採れなくて~。」

‥ホワット?

一時間て何の事ですか?

とりあえず何も聞かなかった事にして、患者さんの元へ。

辿り着いた患者さんの布団をめくると‥
両手足がくまなく青黒い内出血斑で変色しとる。

‥ホワイ!?

ご丁寧に、無数に貼られたアルコール綿。

あぁ‥今日の帰りはマックでチキンフィレオを買おう‥‥バリューセットで‥
などと、しばし現実逃避。

気を取り直して採血開始。
内出血と無数のアルコール綿のトラップをかいくぐって無事採血終了。

ごめんなさいね‥と患者さんに声をかけて布団を直そうとしたら、何故か浴衣の腹部がはだけています。

そこからチラリと見えたアルコール綿。
臍の横にペタリと貼られたアルコール綿。

私、何も見えなかった。
うん、見えなかった。

浴衣と布団を直してにこやかに退室。

採血スピッツを件のベテラン看護師さんに渡して、仮眠室にいそいそと戻ろうとする私にまたもや眩暈のするような一言攻撃。

「お腹でもトライしてみたんだけどね~。」

お腹でトライ?
新手の家庭教師か何かですか?

私の意識が見事シャットダウンしたあのアルコール綿の理由を、華々しくカミングアウト。

‥やっぱりマックはやめてタコ焼きにしようかな‥‥と、再度現実逃避を始めた自分を叱咤して、勇気を出して聞きました。

「何か採れましたか?」
と。

もはや血液が採取される事など望んじゃぁいません。

彼女はニッコリ笑って、「ぜーんぜん。」とおっしゃっていました。

そりゃそーだろうよ。
アンタ、一体その針で何を狙ったんだ‥おばさん。

ちなみに、もしかしたら私が知らないだけで世間じゃ腹で採血する事もあるのかも知れない、と思って友人看護師に聞いて周りました。

某大学病院勤務のベテラン看護師さんから、果ては新しい知識を持っている新卒看護師さんまで。

皆一様に、
「無ェよ。」

と冷たく返して来ました。

私は昨年無事学校を卒業して、自動的にこの病院のアルバイトからも卒業出来た訳ですが、特に事故も起こさず、必要な学費と生活費を稼ぐ事が出来た奇跡に感謝しています。

最後に、もし読者の皆様の中に「腹で採血」情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非是非情報提供お願いします。

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