第33回 ナースは見た / 医療現場の裏側!?

第33回  ありがとう師長さん

突然ですが、もうすぐ私の祖父の五周忌です。
この時期になると、以前勤めていた病院の師長さんを思い出します。
当時、看護師一年目だった私はそりゃもう、師長さんのイジメの格好の餌食でした。

アンタ、完全にウサ晴らしやないか、それ。
的な?
私の公休日に病院内で起こったミスでさえ、
「きっとアイツがやったに違いない。」
と、後日物凄い剣幕で怒られる事もしばしば。
エライ遠隔ミスですね。
あたしゃ超能力者か。

超能力者じゃ無いにしても、休みの日にうっかり出勤して、うっかり仕事して、更にうっかりミスして帰るなんて、どんだけドン臭いねん・・私。

今回は、そんな師長さんとの間に起こった珍事件をご紹介致します。

五年前の三月上旬、肝ガンを患っていた私の祖父の容態が悪化し入院しました。
その事をお昼休みに先輩ナースと話してる最中、師長さんがシレっと私に言い放った言葉に、休憩室中が静まり返りました。

「お葬式で休むなんて急に言われても、シフト組み替えられないんだから、事前にちゃんと言ってよね。じゃないと休みなんてあげられないから。」

・・・ちーん。

何度も言うようですが、あたしゃ超能力者かい。
うちのジイさんがいつ死ぬかなんて、ンなもん事前に分かるかよ。
ユリゲラーでもそんな芸当できません。

呆気に取られて 「あ・・はい、わかりました・・(ぽかーん)」

なんて素直に答てんじゃないよ、私。
あの頃は上司に刃向かうなんて術を持たない、真っ白な白衣の天使でしたからねぇ・・

えぇ、ホントに。

結局、ジイさんの死期を予言出来なかった、至って一般的な能力しか持ち合わせていない私は葬儀には出席出来ず・・。
親族からも冷たい反応。

ごめんねおじいちゃん。そっちで楽しくやってますか?
お墓参りには大好きだったお酒を持って帰るから待っててね。

看護師を辞めて二年、おじいちゃんの顔を見てお別れ出来なかった私は、
今、色んな方の最期のお見送りをお手伝いする仕事をしています。

ズ太くて、打たれ強い今の自分は、あの頃の経験のお陰で形成されたのだと「思い込みたい」ので、この場をお借りしてお礼申し上げます。

ありがとう、師長さん。

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