前回でも述べましたが、コミュニケーションは人と人の関わりであるという意識が大前提です。上司と部下の関係において、上司はいつも正しいという考えがあると関係を築くことができません。上司は部下がいるからこそ、その立場があり役割があるのですが、それを忘れてしまうと当然のように自分の『ものさし』で相手を見たり、求めることが強くなり一方通行になってしまいます。コミュニケーションの基本であるキャッチボールが成り立たちません。実際に「もっと機転を利かせて動いてもらいたい。」「言われたことしかやらない部下を何とかしたい。」というお声も少なくありません。
部下の行動を変えさせようとするよりも、ほんの少しだけ上司が意識を変えるだけで部下は変化します。その事例をご紹介いたします。
まず、「言われたことしかやらない」を「言われたことをやってくれる」と、捉え方を変えてみる。そうすると、後に続く言葉も「言われたことしかやらない、何で?」から「言われたことをやってくれる、ありがとう!助かる!」と変わり、イライラすることが減っていきます。同じ現象が起こっても捉え方が変われば、感情が変わります。見え方も使う言葉も変わります、そうすると自ずと相手の反応も変化します。
そして、当たり前にある何気ない物事へ意識を向けること。意識して気付いたことを言葉で伝えることを徹底します。簡単な書類作成でも「いつもありがとう。助かるよ。」
「先方が分かり易いと喜んでくれたよ。ありがとう。」と何気ないところへ意識を向けて、言葉にして相手に伝える。付箋メモなども活用して一言添えるだけでも十分です。
とても地道なことですし、時間がかかる場合もありますが、日常の何気ないやり取りの中で意識をして積み重ねていくことが大事です。人は認められることで、自信や信頼を育んでいきます。 特に女性は「十分にがんばってくれている。」と認められると更に「もっとがんばれます」「もっとできることはないか?」と自発的に考えるようになっていきます。
思っていたよりも提出が早かった時「早いね、とても助かるよ」と一言伝えただけで、次からスピードを意識した仕事をする人もいます。さらに、「こちらの方が読みやすいと思ったので修正しておきました。」「○○を調べて手配しておきます。」と仕事の進め方に明らかな変化が現れる人もいます。
もちろん、このようにスムーズに行かない場合もあり時間がかかることもありますが、人は自分を認めてくれている人の期待に応えたい、役に立ちたいと思うものです。ついテクニックを身に付けたくなりますが、その前にまず相手を認めて心で向き合うこと。
「仕事をやらない」のではなくて、何かしらの理由があって思うように「できない」場合もあります。しっかりと耳を傾けて、「何が壁になっているのか?」また「どうしたらできるようになるのか?」を一緒に考え導いていくことが大切です。相手がどんな反応をしようとも、まずはこちらから「ありがとう」を伝えること、相手の可能性を信じて関わることが大事です。
言葉にするからこそ通じ合えるものなのです。