「見本となること」は表面的なことよりも、心がまえや姿勢こそ大切です。自立型思考の人は、何をするかよりも何のために、何故するのかを大切にして実践しています。 どのような状況に置かれたとしても、その状況でどのように考えどのように行動するかは自分次第ですし、その姿勢が相手に伝わるのです。
私の体験談ですが、仕事に慣れてきた入社2年目、ある先輩と一緒に国内線を乗務した時のこと。機内販売が好評でたくさんお買い求めいただくことができました。フライト後、先輩はメモをとりながら機内販売担当の私に質問をしてきました。お客様に対してどんな気持ちでどんな言葉を掛けたのかなど詳細に訊き、次のフライトですぐに実践されました。
先輩・上司という垣根を越えて、部下からも学ぶ姿勢を持ち実践される姿は、私の仕事に対する姿勢を大きく変えるキッカケにもなりましたし、今でもお手本とさせていただいています。
また、離陸後に機内サービスの打合せ中、「カートの上にはホットコーヒーとスープを乗せます。」と言うと、「なぜホットコーヒーとスープのチョイスなの?」と質問されました。
「昼食時なので、空港で食事を済まされた方へホットコーヒーを、お腹が空いている方にはスープをと思いました。」と、「違うわよ」とバッサリと言われてしまいました。
「搭乗中、団体のお客様の手元を見ていた?何を持っていた?」
「お弁当です。」
「そうだよね。」
「ということは、温かい日本茶とスープのチョイスがいいのでしょうか。」
「え?本当にそう思うの?」
「えーっと、はい。」
「私だったら、コーヒーとスープのチョイスにします。お弁当と一緒にお茶が付いていたでしょ?」
その時は、内心「私の選択も合っているのに、そんな言い方しなくても…」と思いました。
「お昼時=コーヒー・スープという考え方はダメよ。お客様の状況をしっかりと見て考えなさい。」何を選ぶよりもどうしてそれを選ぶのか理由が重要であり、その考え方を現場で教えて下さっていたのです。私に選択肢を与えながら自分で考える力をつける為に指導をして下さったのです。
自立型人材の「育成」と「指導」を実践されている先輩の下で学んだおかげで、いかなる状況でも自分なりに考え行動することの楽しさも体験することができました。 自立型人材は、何か問題が起こると自己責任で考えたくなるように受け止めます。(他人に原因があるのではなく自分に原因があると考えます。)そして、直接的な見本と日常の行動で見せる間接的な見本を示します。
例えば、何回伝えても、こちらの言っていることを分かろうとしない部下がいたとします。 その場合は、自分の接し方に原因があった・自分の言っていることと行動に矛盾があった・相手の言い分に耳を傾けてなかったなど自己原因を考えます。 そして、相手に耳を傾けていなかったことを反省し、真剣に相手の言いたい事を聴いて理解を示す。日常では、自分が言っていることを自ら行動し言行を一致させて見本となる姿を見せます。
先輩自らが自立型人材である職場は、前向きで活気があります。あらゆる問題もどうしたらできるだろう?と考え手法を選択し行動します。その姿勢こそ忙しい中でも見本として後輩に伝わっていきます。そして、その一人一人の姿勢が病院や企業など組織の品質となり価値を高めていくことにつながっていくのです。