自立型思考の人材は、自ら考え行動することができます。このような人材を育成するためにはどのようにすればよいのでしょうか。
まずは、ありがちなケースを見てみましょう。現場で起こりやすい状況の一つとして、本人にやってもらった方がいいと思いつつも忙しくて、とりあえず言ったとおりをそのままさせてしまうことがあります。もしそのような指導を続けたら、どんな人材が育つでしょうか。
具体的な行動を全て指示して言ったとおりの事をそのままさせようとするほど、相手は自分で考えず判断もできなくなってしまいます。次第に指示を待ち、自分の意見を言わなくなります。
また、「また?前にも言ったでしょ、何回も同じ事を言わせないで」と言葉や態度にその気持ちが表れていると 今後わからないことがあっても誰にも聞けなくなって相談しなくなり、やりがいよりも誰にも聞かなくて済む仕事を選び、無難に過ごすようになります。
「リーダーの機嫌が悪くなったら厄介だから、言われたとおりにやっておいてね。」
上司の意図する行動をしたら高い評価を得られる、そうしなかったら厳しい評価を与えられると考える先輩の下にいると、同じように自分の利益を守ることだけが仕事の動機になってしまいます。
はじめは自立型で積極的に質問し確認しながら仕事に取り組んでいたとしても、波風を立ててまで積極的に取り組もうと思わなくなってしまうのです。
こうして依存型人材になっていくと、組織の活性化に関心がもてなくなります。変化することが負担に思え、面倒に感じるのです。
言われたことだけを無難にこなし、会議などでは発言をしなくなります。職場への不満があったとしても改善するための行動は起こそうとしません。
自分で考えて行動しても、認めてもらえないことが分かってしまうと、上司に与えられたことをこなすだけの無難な仕事しかしなくなります。
行動を強制したとしても心が伴っていなければ、やらされた仕事なので、目先のことで手一杯になり全体的に物事を見ることをしません。注意されても自分の待遇条件に影響がなければ、適当に聞き流すのです。
人材を育成するための管理をすればするほど、依存型思考の人材が育ってしまいます。組織力やチームワーク、業務効率にも成果が表れず悪循環になりかねません。
前回のテーマにもありましたが、人材育成は「やる気にさせること」です。やる気になってこそ、自ら行動するために相手の話に耳を傾けるようになります。そのために「こちらが見本となって取り組むこと」が大切です。
例えば、同じ事を何回も聞いてくる時は、どうしたら相手が理解しやすい説明ができるだろうかと自分にベクトルを向ける姿勢や、上司や環境がどうであろうと自分がするべきことを精一杯取り組む姿勢など、その心のあり方が相手に伝わるものなのです。