vol.43
財団法人東京都保健医療公社 荏原病院
111年の歴史を持つ荏原病院は、1994年に改築し、東京都から(財)東京都保健医療公社に運営移管されて5年になります。
2010年度運営方針の主題は、患者中心の温かい医療の提供、地域医療ニーズを踏まえた連携の推進、質の高い人材の確保・養成、財務基盤の確立の4つといたしました。
地域中核病院として、地域の医療機関と密接な医療連携(連携医1720人)を構築し、高度専門医療(重点医療として救急医療、脳血管疾患医療、集学的がん医療)を提供しています。特に、脳血管疾患医療については、2005年に総合脳卒中センターを設置し、城南地区の基幹病院として24時間体制で待機しています。
2009年10月には東京都で9番目の地域医療支援病院に承認され、連携医との共同診療を推進しているところです。 また、都立病院時代からの役割であった、地域から期待される感染症科、精神科、小児科、産科などの行政的医療も継続して担当しています。 私たちはこの地域の医療機関と協力して、地域住民の皆さんが必要とするときに適切な、安心・安全で信頼される医療を提供することが使命と考えています。
看護部は院の理念に基づき、他部門と協力しながら看護の責任を果たすことを目指し、2つの理念を掲げます。
看護の目的は、患者のもつ自然治癒力・回復力を引き出し、高めることにあります。人は病気になると、挫折し、不安を感じ、時には絶望することもあります。
看護職員は、患者の人格・権利を尊重し、人間に対する深い洞察力を持って患者の心に寄り添い、生きる力を育んでいくことが重要です。 患者の立場を尊重した質の高い看護の提供は、患者の意欲に大きく影響します。
看護は実践の科学といわれています。看護職員は、実践と研鑽を積み重ね、お互いを信頼し、感動を分かち合い、学びあうことで成長します。
看護職員は、専門職業人として患者に責任を持ち、限りなく成長することを目標とします。
荏原病院では新人看護師とともに経験者看護師を受け入れ、個人に合わせた研修受講を勧めています。経験歴は様々です。経験看護師は新人として看護師経験を始めた病院の研修システムや就職した病院の機能や特性に大きな影響を受けています。
当院では職場で求められる中堅看護師としての能力を発揮してもらうため、OJTで学ぶ視点と研修で学ぶ視点を分けて育成を図っています。
新たに当院の職員となった場合でも、看護実践で発揮できる能力には個人差があります。多くの方が電子カルテの扱い・看護記録システム・安全管理の視点で不安を抱きます。たとえば看護師経験10年目でも、看護診断に自信がないという場合にはゼネラルコースにエントリーしながら看護記録初級コース(基礎コースレベルⅡ)の研修を受けることが可能です。
経験者採用の方には、入職時のオリエンテーションとして、安全管理、感染管理、看護記録、電子カルテなどを実施しています。職場に配属後はその方の状況に合わせた院内研修への参加を勧めています。また、興味ある分野への学習を進めるために看護協会をはじめ、様々な研修への参加も一部費用を負担するなど応援しています。
当院では、採用された方の経験をお聞きした上で、個々の看護能力に応じた研修プログラムを組んでいるので、経験者看護師も安心して働くことができます。
【指導者育成コース】
自分自身の看護人生を振り返る『History』の作成から始まりました。自分自身を良く知り、相手を“良く見て・見つめて・見極めたうえで関ることにより、影響を与えていく・・・指導とは教え込むのではなく、可能性を見出すこと・・・研修生一同多くのことを学びました。
さあ!研修生たちの今後に乞うご期待!!
経験者看護師の場合はこれまでの経験が十分に発揮できるよう、心がけて研修を行っています。まずは、オリエンテーションから始まる研修で当院の看護体制に慣れていただき、徐々にそれぞれが積み上げてきた経験が生かせるような環境を提供していきたいと考えています。経験者看護師はいずれも自分の経験が荏原病院で生かせると考えて入職されたはずなので、経験が生かせる環境を整えることはとても大切です。
研修で荏原病院の看護方法などに慣れていただくとともに、臨床現場での受け入れ態勢も重要です。研修で指導にあたる者が職場でも指導できるわけではないので、研修と臨床現場で連携を取りながら職場に溶け込みやすい環境を整えています。そのため、皆が比較的スムーズに職場に溶け込んでいます。
「女性も自立した考え方を持つべきだ」との母の考え方に影響を受けました。近所に家庭を持って助産師をしている女性がいて、高校生のときに、その方から勤務している病院に見学に誘われたのがきっかけです。家庭を持ちながら生き生きと働く女性の姿を見て、「私も」と気持ちを動かされました。
実際に仕事をしてみて、大変なこともありましたが、患者さんからの「ありがとう」の一言に遣り甲斐を感じます。人が寝ているときに仕事をする大変さ、亡くなる患者さんを前にしたときなどは辛いと感じることもありますが、そうした大変さ、辛さを癒してくれるのは看護部の仲間です。看護部では「いきいき働き、イキイキ遊ぶ」をモットーに、メリハリのある看護を目指しており、気持ちを切り替えることで新たな看護に取り組めると思います。
病んだ患者さんの訴え、叫びを聞き取れる看護師であってほしいと思います。確かな技術を身につけることは看護される患者さんに安心感を与えます。その上で、患者さんの心に寄り添う看護が大切です。ルーチンワークにならず、立ち止まって患者さんの心に耳を澄ませるよう、心がけてください。手前味噌になりますが、当院の看護師は患者さんに対してだけでなく、仲間にも優しいですね。看護技術に裏付けられた優しさで患者さんの痛み、苦しみに耳を傾けているのが当院の看護師たちです。退院された患者さんのアンケートからも「とても優しくしていただきました」という言葉が多く寄せられています。
色々なタイプの看護師がいていいと思っていますが、確かな看護技術を持っている方、この分野の看護技術には自信があるという方は歓迎します。看護師はほかの職業に比べても厳しい仕事だと思いますが、そういう職業をあえて選んだのですから、本来、どなたも患者さんへの優しさにあふれているんですね。看護技術が未熟だと感じていたとしても、そこに止まるのではなく、成長しようと前向きに考え、行動する方に来ていただきたいです。
今後、当院では脳卒中専門チームで急性期からリハビリまで治療を一貫して行うSU(Stroke Unit)を立ち上げる予定ですが、看護部でもSUの看護レベルを充実させたいと考えています。すでに摂食・嚥下障害の認定看護師や脳卒中リハビリテーション看護教育課程を修了した看護師(今年5月に認定試験受験)が働いています。
経験者看護師採用の際には、自分の知識や経験を客観的に把握するためのチェックリストを用意しています。それを参考に自分に足りない看護技術を看護部でフォローするような態勢をとっています。ですから、「中途採用だけど、自分の経験では不安」と思われる方でも十分な支援ができます。また、さらに成長したい方に対してもスキルアップの研修を用意しているので、安心して来ていただきたいと思います。
ICUは全ての診療科の患者さんを対象に集中的な治療を行っています。患者さんの早期回復を目指し、職員一丸となって心温まる看護を提供しています。
手術室は年間約3300例の手術を行い、新人からママさんナースまで幅広い年齢層の職員が楽しく働いています。
循環器内科、感染症科、消化器内科など内科全般の患者さんが3階フロアの対象です。心電図の観察、呼吸管理、がん性疼痛コントロール、糖尿病指導、感染管理など、看護師は「温かいハート」、「元気なハート」で患者さんに寄り添った看護を提供しています。
外科、整形外科、脳神経外科、神経内科などの病棟があります。脳神経外科と神経内科の病棟は総合脳卒中センターとしての機能を備えています。入院したその日から退院後の生活を考えたケアができるようにスタッフ一同取り組んでいます。
産婦人科、乳腺外科、小児科、精神科などの病棟があります。人間の誕生に感動し、人生の苦悩に一緒に涙するといった心のケアに奮闘しています。廊下や壁は暖かく、ホッとするピンク色で統一されています。5階からの景色は素晴らしく、食堂からは富士山も見ることができます。
立野:偶然なんです。正社員を募集している病院を探していて、荏原病院を見つけたのですが、村川看護部長のお人柄に触れて、看護師を続けていく間はこちらで働きたいと思いました。慣れるまでは病棟の雰囲気も分からないし、看護の方法も以前に勤めていた病院と異なり、それなりに大変でしたが、3カ月ぐらい経って、ようやく慣れてきました。
寺田:私は看護師になって8年目ですが、友人などを見ていると、やりたい診療科に移ったり、皆がそれぞれの道を歩き始めています。そんな姿を見て、私もやりたいことをやるなら今しかないと思い、荏原病院に入職しました。私は手術室勤務を希望していたのですが、経験8年目では敬遠される病院が多かったんですね。しかし、荏原病院では私の希望を受け入れてくれたのが理由の一つです。もう一つは看護部の雰囲気がとても良く、私に合っていたことです。面接で、私の不安に対して、一つ一つ丁寧に答えていただいたのが印象的でした。看護師の研修や教育、手術勤務に対する不安など、心配する材料は色々とあったのですが、お話を聞いて払拭されました。
立野:充実していると思います。中途採用でいくつかの病院勤務経験がありますが、それらの病院と比べてもトップクラスの研修内容ですね。経験者採用の研修では同じような立場の仲間がいるので、お互いに励まし合って頑張ることができました。
寺田:経験者看護師に対して、とても親切なプログラムだと思います。手術室に関しても、とても丁寧に教えていただき、臨床現場での働きやすさを感じました。
立野:荏原病院に来て、先輩の看護師がとても真面目に看護に取り組んでいる姿に尊敬の念を抱きました。見習わなければいけないなと思います。私も看護師として成長過程にあるので、先輩から色々なところを学びたいですね。
寺田:荏原病院はお母さん看護師さんが多く、若い看護師への注意も上手だなと感じました。看護部長や副部長が看護師の顔と名前を覚えていて、「寺田さん、今日はどうだった?」と親しく話しかけてくださいます。そういうことは私にとってとても嬉しいことの一つです。
寺田:希望した手術室に勤務できて、それだけで遣り甲斐があったのですが、これからは後輩の指導にも心を砕きたいと思っています。中途採用で入職した看護師も多いので、同じ立場の看護師として共感をもって接していきたいですね。それから、手術の流れだけを頭に入れておくのではなく、なぜそうなるのか、根拠を考えながらサポートできるようにしたいです。勉強したいことはたくさんあります。
寺田:手術室に勤務するようになってから感染に興味を持つようになりました。具体的には周術期の感染対策です。感染防止対策は手術室でも重要なテーマの一つであり、私たちスタッフが感染防止対策を十分に行うことで院内全体の感染防止にもつながります。その意味で、これから感染のことを勉強して、病院にとってかけがえのない存在になりたいと考えています。
立野:5歳の子どもがいるのですが、保育園にかかる費用を公社が負担してくれるので、とても助かっています。保育料助成制度といって、子どもが小学校入学まで、保育園にかかる費用の50%(子ども1人につき上限5万円まで)を公社が負担する制度(※)です。また、子どもが病気になってしまったときも休みを頂けましたし、小さな子どもがいる看護師にはとてもありがたいですね。そのほかの福利厚生面でも充実している印象です。
※女性職員(パート職員除く)のみ対象
寺田:福利厚生は色々な面で充実していると思います。夏と冬に納涼会と忘年会があります。ホテルで行いますが、華やかで楽しいパーティーです。また、小グループでの韓国旅行や食事会などもあり、日頃、親しく話さない職員の方ともコミュニケーションが取れる機会は少なくありません。
荏原病院は病院として互助会を組織し、各職員が積み立てた資金で親睦会など、幅広くレクレーションを行っている。また、看護師寮が敷地内にある。部屋の広さは約20㎡で、セキュリティ面でも充実している。自由が丘も近く、ショッピングにも最適である。