vol.27
東大阪市立総合病院
本院では、最新の医療機器を揃えて高度な専門的医療を提供すると共に、患者さんの立場に立った「思いやり」のある医療の実践を目指しています。また多くの市民の皆様に医療を効率的に受けていただけるよう地域の医療機関と連携し、東大阪市の中核病院としての役割を果たしております。
「安全で質の高い医療」を提供、市民の皆様に信頼され、誇りに思っていただけるような市立総合病院へ向けて、職員一同研鑽を積んでいく所存です。
皆様方の一層のご指導、ご支援をお願い申し上げます。
人口51万人と大阪府下では、大阪市・堺市についで3番目に大きな市です。河内平野のほぼ中央に位置し、中河内医療圏(八尾市・柏原氏・本市)の二次救急と地域中核病院としての機能を果たしています。
わたしたちは地域のみなさんに信頼され、心とこころがつうじ合う看護をめざします。看護に誇りをもち、医療チームの一員として連帯して最良の看護をめざします。
看護はすべての健康段階にある人を対象に実践されます。
当院では外来に1日約1400人の方が受診に来られ、病棟では約500人の方々が入院生活を送られています。1人の看護師が勤務時間に接する患者さんやご家族は一部分ですが、多種多様なニーズに対応し、満足いただける看護は看護職員全員が「看護とは何か」を常に考えながら実践しなければ得られません。そのことを踏まえ、私たちは当院オリジナルな「看護業務実践基準」を開発しました。
この基になるのは、日本看護協会の看護業務基準と看護者の倫理綱領です。いかなる患者さん、ご家族に対して、常に4つの看護によるアウトカム(大目標)を設定し基準に沿った、個別性のある看護実践を心がけています。
新人看護職員研修として「わかば研修」を実施しています。これは4月の集合研修が終了した後、新卒の看護職員全てを対象としているものですが、中途採用者も希望があれば参加可能になっています。期間は5月上旬まで15日間程度で、時間は16時から17時までです。わかば研修では、実習病院で十分に経験できなかったことを中心に教育委員、研修委員、現場の師長が指導にあたっています。
プリセプターは半年で離れるシステムにしていますが、新人にとってはやはり一番話しやすい存在のようで、その後も精神的に支えてもらっていますね。プリセプター、プリセプティーの後ろでは主任クラスの看護師がおり、1年間の技術チェックをしてくれています。
これはジェネラリストを育てるための目標で、チェックリストをつけ、評価基準も定めています。チェックリストの中で技術的なことに関しては現場ごとに異なります。もし評価基準を満たさなかった場合は半年ぐらいの期間を置いて、再チェックとなります。6年目以降のステップ4を過ぎますと、認定看護師などのスペシャリストへの道も用意されています。このステップアップ表を作成して、2年がしだいに浸透していっているところです。
わかば研修に対して、もみじ研修という名称なのですが、あまり評判がよろしくないので、名称の変更を検討中です(笑)。中途採用者の場合は経験やスキルがまちまちですので、かなり個別的な対応になっています。オーダリングシステム、採血デモスト、点滴、シリンジポンプなどがニーズの高い内容ですね。今回の募集では45歳までに年齢を引き上げましたので、多くの中途採用の方に来ていただければと思っています。
6歳上の姉が看護師として働いていましたので、その影響が大きかったですね。姉からも「楽しい仕事だよ。将来、看護を楽しめるようになるよ」と言われました。そして看護師として働き始めたときに、最初についた看護師長の姿勢がとても素晴らしかったんです。その方はやがて看護次長になられたのですが、その姿をずっと見て、生き方に憧れの気持ちを持ち続けたことが私が看護師の仕事を継続できた原動力なんだと思っています。「怒るときは怒る」というめりはりがあり、正直で正義感の強い方でした。常に患者さんの目線を持ち、スタッフのことも守ってくれましたね。
私は学校を卒業してすぐに結婚し、出産を経てから、入職したんです。入職にあたっては当時の中央病院が八戸ノ里駅前にあり、住まいに近く、アクセスが良かった点も大きかったですね(笑)。新人時代に既に主婦だったわけですから、その点では大変でした。家族の理解があったこと、夫の実家が近くにあって協力してもらったことで続けられました。
私自身は看護とは人を大事にすることだと思っています。看護師に求められるのは人柄や人格ではないでしょうか。どれだけ技術や知識があっても、人を癒すことができない人は適性があるとはいい難いですね。そして、経験を積み重ねながら学習する力と悩み考える力と創造力を持ち続けることだと思います。大切なことは自分の仕事に求められていることは何なのか、使命は何なのか問いながら本質を見失わないことがより良い看護につながっていくと思っています。
一方で看護管理者としては看護の仕事に使命感を持ち、働く人の環境を整え、社会貢献していくことを意識して管理していくことが仕事だと思っています。病院という組織においては人との出会いが大事ですから看護職員の採用時はその人を見つけ、育て、活かしていく組織つくりを意識していますがなかなか、現実的には良い出会いと縁はむつかしいものがあります。働き続けることのむつかしい環境の中で子育て看護師さんたちの働く環境つくりとして平成20年度から院内保育所が開設されました。現在、9名のかわいい子供さんたちが入園しています。最近では保育所の行事で夕涼みの会があり、院長や事務局のみなさんや私も出席し孫のように愛らしい子供たちと楽しい時間を過ごしました。短時間労働も導入され、子育て中看護師10名ほどがこの制度を利用し臨床の場を離れることなく仕事を続けてくれています。私の看護観として看護の仕事を好きであってほしいと願っています。そのために専門的な勉強もし、人間関係も悩みながらも強くなって、患者さんに向き合ってほしいと希望を持ち続けています。
仕事には責任と義務があることを自覚することが社会人としてのマナーだと思います。それには辛抱する力、耐える力を身につけてほしいですね。働く上で苦悩はあり、石の上にも三年」と言われています。その期間に慌てず、支えてくれる仲間をつくり、楽しんでほしいです。看護の仕事は人との関わりを抜きには考えられないので躓きながらでもうまく素直に自分を表現でしたら幸いですね。大切なことは「あせらず、あわてないこと」。
東大阪市立総合病院に入職を決めた理由をお聞かせください。
千丈:いろんな病院で働いてきましたが、住まいに近い病院がやっぱり働きやすいんですね。結婚後は東大阪市に住んでいますので、ずっとこの病院で働きたいと思っていました。でも年齢制限が30歳まででしたので、諦めていたところ、40歳に引き上げられたので、応募しました。以前、市立堺病院に勤めていましたので、雰囲気が似ていそうな安心感もありましたし、「心とこころがかよい合う看護」というホームページに出ていた看護理念にも共感するところが大きかったです。
岩永:前の病院には7年間勤務し、ずっと消化器外科病棟にいたのですが、自分のステップアップを考えたときに、もう少し規模の大きな病院で働きたかったんですね。東大阪市に住んでいたということ、がん看護に興味があって、がん拠点病院で勉強したいということで、こちらに入職を決めました。がん化学療法看護の認定看護師が2人いることにも惹かれましたね。
病棟での仕事について、教えてください。
千丈:整形外科病棟は骨折や腰のヘルニアなどの疾患で、運動機能を障害された患者さんがメインです。ほとんどの患者さんが手術を受けますので、手術後のリハビリやリハビリ専門病院への転院に伴う仕事も少なくありません。ADL拡大の援助、セルフケアの不足をフォロー、退院の調整など、様々な仕事がありますが、整形外科は、歩いて、笑顔で退院される患者さんをお見送りできるのがいいですね。動けない方、車椅子の方、高齢の方など看護度の高い方の入院が重なりますと、 清拭などの介助が増えますので、体力的にはきついときもあります。でも、いつも忙しいわけではありませんし、同世代で、中途採用だったり、子どもの年齢が近い看護師も多いので、仲良く働いていける病棟です。
岩永:急性期病院ですので、検査ももちろん多いのですが、看取りの機会も多いんです。多い月で20人ぐらいの看取りがあります。人生に一回しかない場面に立ち会うわけですから、毎回、「これでよかったのかな、この方のためになったのかな」と反省することばかりです。それでも元気になって退院される方もいらっしゃいますし、患者さんから泣かれたり、「ありがとう」と言われるなどの反応があると、充実します。患者さんと一対一で向き合い、語り合う看護や関わりは難しいですが、遣り甲斐もありますね。
東大阪市立総合病院の勤務で、良い点はどんなことでしょうか。
千丈:整形外科病棟は2交代制なのですが、私にはメリットですね。確かに夜勤は長くて疲れるのですが、明けた後が必ず休みなんです。そのため長く家にいられますので、子どもと長い時間、接することができます。日勤の日もほとんど残業はないですね。院内保育所も月曜と木曜は夜間も開いていますので、利用している人も多いです。子どもがいても続けていける環境が整っていて、子どもが熱を出したときなども休むことができますし、皆で助け合える病院です。バッティングしないようであれば、夏休みを固めて入れてもらえます。中途採用の年齢制限も今回の募集からは45歳に引き上げられています。中途採用でも前の経歴がきちんと評価されて、お給料に反映されている点もいいです。ボーナスも景気の波に左右されないのは公立病院の良さではないでしょうか。
岩永:以前の病院で経験できなかった血液内科を当初は志望していたんですね。しかし、配属されたのは整形外科でした。それを直属の師長に訴えたところ、人事にかけあってくださったんです。訴えをすぐに聞いてくださったのは嬉しかったですし、私も「中途採用なんだし、まずは整形外科で実績を作らないといけない」と前向きに考えることができました。そして1年半経ったときに改めて血液内科に配属してもらえました。こういう人事をしてくれる病院なんですね。有休を取りやすい点もいいです。前の病院の7年間で取った有休の数と同じぐらいの数をこの病院の1年で取りました。結婚した年には特に有り難かったです。年末年始や祝日の出勤手当もとても高いんです。福利厚生がきちんと整っていると、また頑張ろうという気になります。それから院内研修のシステムも整っていまして、中でも、がん化学療法看護の認定看護師による講義は本当に面白いです。
今後の目標について、お聞かせください。
千丈:訪問看護師をしていましたので、病院勤務は久しぶりなんですが、医療技術の進歩には驚かされています。胃婁の注入薬なども非常に便利になっていますね。胃婁や骨折などを積極的に勉強して、将来、またできるのであれば訪問看護の場面に生かせたらなと思っています。ほかにも訪問診療をどう行っているのか、どういう地域連携を行っているのかなど、医療について様々な角度から勉強して、いろんな情報を吸収したいと思っています。
岩永:がんは誰もがなる可能性を持ち、そのうち日本人の死亡原因一位になるのではないかと予想されています。がんについて知れば知るほど、深くて分からないことばかりですが、突き詰めようとするうちにすっかりはまってしまいました。今後は専門性を高めて、がんに関する分野で認定看護師を取得したいと思っています。私の看護観の一つに笑顔があります。「患者さんが10人いたら、10人の笑顔を見られれば、その日はOK」なんです。関わった人全てに笑顔になっていただきたいですね。