vol.26
特定医療法人社団健生会 立川相互病院
三多摩地区を診療圏にする中核病院である立川相互病院はJR立川駅から徒歩10分ほどのところにある。医療法人健生会は立川相互病院を中心に診療所、歯科診療所、訪問看護ステーション、在宅介護支援センターを持ち、1951年の開設以来、約60年にわたって、乳児から高齢者まで地域住民の健康を守り続けてきた。その一環として、近年では超高齢社会に対応する在宅医療にも力を入れている。
パンフレットには「患者、地域の人々と共に安全、安心、信頼の医療をすすめます」とあるが、同病院の特筆すべき特色は「チームワークのよさ」である。医師と看護師の距離が近く、それぞれの専門性を尊重しながら質の高い医療を提供している。また、患者様との信頼関係も強く、地域の人たちは、親しみを込めて「私たちの病院」と言う。立川相互病院の看護部は確かな技術に裏づけられた、心のこもったケアを実践して地域住民に信頼されている。
患者様一人一人が歩んできた人生、生活を考慮して、何よりも「命」を大切にしてあきらめない看護を目指しています。急性期病院として手厚い看護体制(7:1看護基準)をとり、ベッドサイドで患者様の肉体的、精神的、社会的苦痛に寄りそうケアを実践しています。(佐藤静香副院長/看護部長)
立川相互病院看護部では、ともに考え、ともに学び、そして成長するための看護教育を実践しています。ベッドサイドに行く時間をできるだけ多くとり、患者様に寄りそう看護を行うように、不慣れな新人看護師の気持ちに配慮した教育を心がけたいと思っています。看護師になって1年以内の退職が多いことが問題になっていますが、私たちは1年以内の退職率ゼロをめざし、2005年から2007年までの新人退職率をゼロにすることができました。(重野扶美子・副看護部長/教育担当)
新人の指導には3年目の若手看護師がつきます。新人に最も近い若手看護師が先輩として後輩の指導にあたるわけです。3カ月目には色紙に「入職3カ月、頑張ったね」の寄せ書きをし、職場の皆でねぎらいます。医師も一言を寄せ、職員全員が新入看護師を応援します。
配属は本人の希望を聞いて決めますが、必ずしも希望の職場でうまくいくとは限りません。3年間で4人が職場を異動しましたが、異動先で元気に頑張っています。
新人は大きな可能性を秘めています。職場に合わない、技術が取得できないなどの理由で、諦めさせたり、退職させてはいけないと考えているので、1カ所でダメなら、もう1つ別の職場を経験してもらうことにしています。「働きたい、看護師として成長したい」と考えている人には、私たちはいつでも応援の手を差し伸べます。「みんなで考え、みんなで学び、みんなで成長する」ことが立川相互病院看護部のモットーです。
立川相互病院は、それぞれの目標に合わせて4つのコース別プログラムを用意しています。
4年間で2つの職場を経験し、スキルアップを図るジェネラルコース(基本)、安全で自然なお産と女性のライフサイクルを支える専門家を育てる助産師コース、地域住民や働く人々の健康を支える保健指導の専門家を育てる保健予防コース、的確な判断力を身につけた、在宅療養を支える専門家を育てる訪問看護・在宅コースです。
当院には、認定看護師の資格取得のための支援制度があります。半年間、勤務が免除され、その間に看護師教育課程を受講します。勤務免除期間の給与は保障されます。
卒後1年目はマニュアルを見て、指導を受けながら安全・安楽な看護が実践できるスキルを身につけます。卒後2年目には退院後の患者様を訪問し、生活背景を理解した上で、適切な看護ができるようにします。卒後3年目は新人看護師を指導できることを目標にします。卒4年目になると、病院から地域の診療所、訪問看護ステーションなどに出向き、地域で暮らす患者様の生活を支えるための医療と福祉の連携を体験を通して学びます。
新卒の教育はここで修了しますが、卒後5、6年目からは、チームリーダーとしてリーダーシップを発揮し、創意工夫の看護実践、専門領域における適切なコンサルテーションができる看護師を目指します。卒後7年目以降は、医師とディスカッションして患者様に最もふさわしい医療、看護を提案するができるようになります。
支援内容は以下の通り
(1)研修
①看護部研修
1日目の内容【時間保障】
・看護部オリエンテーション「ようこそ立川相互病院へ新入看護職員オリエンテーション」
・電子カルテ操作指導、看護記録オリエンテーション、院内外見学
2日目の内容【時間保障】
・安全管理研修・病院感染管理研修・看護必要度研修
技術研修会【時間保障】
・看護部で参加を必要と認めた看護師
注射、採血、BLS研修など
②全体研修
新入オリエンテーション(入職2カ月以内)【時間保障】
・就業規則・共済組合、院内防災、個人情報保護・情報教育
新人過程(入職6カ月以内)【時間保障】
・応対マナー・病院の歴史 他
(2)支援看護師の配置
配置期間は6カ月
新入職看護師が職場に定着できるように日常的に相談に乗り、声かけし、1カ月の終わりに面談を行う。
(3)面談
常勤看護師を対象とするが、非常勤者についても役職で分担の上で行う
1カ月終了時 支援看護師
2カ月終了時 職場役職者
3カ月終了時 職場師長
6カ月終了時 職場師長
以上のような教育プログラムで、ともに学び、ともに成長し合い、モチベーションを維持し、さらには高めていきます。
「女性も自立しなければ」と母にいつも言われていました。それで自分なりに考えて「自立するなら看護婦だな」と思い、看護学校に進学しました。
学生時代の看護実習は大学病院だったのですが、医師と患者様だけでなく、私たち医療スタッフとの間にも大きな距離を感じました。ところが夏休みの看護体験で立川相互病院に来てみると、とてもアットホームで患者様との距離が近く、患者様の立場で医療を考える姿勢に感動しました。職員の方からも「病院を大きくするので、一緒にやろう」と呼びかけていただき、入職を決めました。
一言でいえば、患者様を一人の人間として診ることです。病を得ても生活があり、生きてきた歴史があります。それぞれの人生を尊重して、どういう看護が最もふさわしいのかを患者様と一緒に作っていくことが大切だと感じています。
立川相互病院には、患者様に限らず、医療スタッフを人間として、医療人として尊重する伝統と文化があります。看護師から医師に「この痛みを和らげるにはこういう薬を使ったらどうでしょうか」と提案することもまれではありません。医師も看護師を一人の医療人として尊重していますから、職場の雰囲気がとてもよく、働きやすいと言われています。
互いに尊重しあい、よりよい医療や看護を実践したいと思う気持ちは立川相互病院の全ての医療スタッフに共通した思いです。
7:1の看護基準が認められるようになった2006年に当院でも導入しました。入院患者7に対して1人の看護師を配置する、この基準は現在最も手厚い看護基準ですが、結婚や転居によって退職する看護師もいるので、毎年40名前後の看護師を採用しています。院内保育が充実しているので、産休・育休を取った後ほとんどが職場復帰します。今年は産休を取る看護師が19人もいますが、全員が戻ってくる予定です。
40年も続いているすこやか保育園では、こんなサービスもあります。昼間の保育園へお迎えに行き、夕食を食べさせてくれます。これによって勤務に続く夕方の学習会参加や、後輩の指導にも時間がとれます。看護師として責任ある仕事が続けられます。
朝8時30分から17時30分までの日勤、16時から1時までの準夜勤、0時から翌日の9時までの深夜勤という3交代の職場は少なく、多くは2交代勤務です。職場ごとの話し合いで、最もよい勤務時間が決められています。今月も3交代から2交代に代わった職場があります。2交代になると、夜勤が3、4人になりますので、看護師さんも安心できますし、患者様を待たせることが少なくなります。
病気のことだけでなく、患者様がどういう暮らしをしているのか、どんなお仕事を持っているのかということなどにも配慮して看護ができるようになってほしいと願っています。肉体的な苦痛だけでなく、患者様の精神的、社会的、経済的背景まで配慮してはじめて、寄り添う看護ができるのです。言葉だけで優しくしても「寄り添う」ことは難しいでしょう。
ともに考え、ともに学び合うことで互いに成長し合うための教育だと思っています。看護師として誇りをもって働いているスタッフばかりなので、一方的に教えるのではなく、一緒によりよい看護を考えていければと思います。
当院の看護師は向上心が強いので、1年も経つと本当に立派になります。仕事に対する自信と誇りが笑顔に表れるようになります。だから当院の看護師は美人揃いなんですよ(笑)。内面からの美しさが生き生きと働く姿に表れます。
職員の子育て支援をさらに充実させたいと思っています。院内保育園は充実していますが、さらに幼児保育や学童保育にも力を入れたいと考えています。産休を取って、再び看護の現場に戻ってきた職員が働きやすい職場になるようにしたいですね。
たとえば、院内感染防止対策が医療の重要課題になっていますが、当院ではICN(インフェクション・コントロール・ナース)を中心に週1回のICTラウンドを実施して、院内環境整備を心がけています。抗生物質の使用量も常にチェックして、必要があれば使用制限するようにします。抗生物質の過剰使用は耐性菌の増加にもつながるので、医師の協力が不可欠ですが、スタッフ全員が積極的に院内感染防止に取り組むことが重要だと考えています。その結果として、安心で安全な医療が担保されているのだと思います。
立川相互病院で働きたいと思った理由
立川相互病院で学生時代に実習をしたので、以前からよく知っていました。助産師になりたいと思ったのも、産婦人科実習でお産に立ち合って、感動したからです。ただ、卒業したときは大きな病院に就職したいという漠然とした願望があり、大病院に就職したのですが、看護観に違和感がありました。もっと患者様のために心を尽くした看護がしたいと思い、以前から知っていて、アットホームな雰囲気が好きだった立川相互病院に入職しました。
チームワークについて
医師には何でも聞けるし、教えていただけます。医師と私たちとの関係はとてもよく、病態に応じてしなければいけない出産後の管理についても、なぜそういうケアが必要なのかをきちんと教えていただけるので、私たちも看護技術に裏づけられた心のこもったケアができています。
仕事のしやすさについて
週1回の合同カンファランスで治療方針や看護方針についての方向性が決まり、それに合わせて、チームが機能的に動いているので、何をすればいいかということがいつも分かっています。その意味で、とても仕事がしやすい職場だと感じています。医療チーム全体がいつも笑顔で患者様に接していますが、常に患者様中心の治療やケアを心がけているので、心から笑顔になれます。
やりがいを感じるとき
お産が何件も重なるときはとても忙しいのですが、お産が少ないときは患者様のベッドサイドに行く時間も十分取れます。一番、嬉しいのは患者様の笑顔が見られることです。初産婦さんに授乳や赤ちゃんの抱っこの仕方を「こうすればいいのよ」と教えますと、しばらくして「自信がつきました!」と嬉しそうに言ってくれるときは「やったあ!」と思いますね(笑)。
病棟の特色
分娩数は年間400件くらいですので、他と比べて多いというわけではありませんが、自然分娩が多いのが特徴です。医学的に必要がなければ会陰切開、早期の人工破膜などの処置で人工的に出産を早めるようなことはしません。妊婦さんに悪影響を及ぼさない自然分娩、母乳栄養の推進が産婦人科病棟の特色なので、お産が終わった後、心から「無事に生まれてよかったですね」と言えます。
今後のキャリアビジョン
助産師として自信を持って仕事ができるようになったら、他の病棟も経験したいと思っています。いろいろな経験を積んで、将来は助産院を開き、定年と言われるような年齢を過ぎても、女性の一生にかかわっていきたいと思っています。
立川相互病院を選んだ理由
都市圏の病院で、救急車の搬入台数が年間3090件と、とても多いことを知り、救急の患者様がこれだけ多いのだから、多様な病態を勉強できると思ったのがきっかけです。それから地域密着型の病院であることにも魅力を感じました。学生時代には考えたこともなかったのですが、看護師として働くようになって、退院した患者様のその後の生活がとても気になっていました。地域密着型の病院なら、退院後の患者様のフォローにも関わることができるのではないかと思いました。
ICUの仕事について
毎日が大変で余裕もあまりないのですが、状態が悪い中で日々回復していく患者様に声をかけられるようになったときなどはとても嬉しく思うし、充実します。確かに大変な職場なのですが、看護の基本を学べるので、ここでの経験は将来、きっと役立つと信じています。
立川相互病院に勤めての感想
先輩看護師は気がついたらすぐに看護や治療についての提案をします。医師だからと遠慮するところがありません。自信を持って看護をされているからこそできることのだと思います。今までは先生から言われたことを患者様にしてさしあげるばかりだったので、先輩看護師は患者様のことをすごく考えて看護していると思いました。提案できるだけの知識も技術もあるから言えることですが、とても印象的でした。
教育体制について
新人看護師教育が徹底されています。こんなに手厚く、1人の新人さんを育てていくことに驚きました。1年目に基礎から臨床看護を教えてくれるのはこの病院ならではだと思います。既卒の看護師はそれぞれ看護職へのモチベーションが違うはずですが、学べる場所、成長できる場所という実感がすごくあります。学びたい人、成長したい人にとってはとても良い環境ではないでしょうか。
後輩へのアドバイス
仕事に対しては厳しく叱られることもあるのですが、なぜダメだったのかをきちんと教えていただけるので厳しさが身につく感じです。人間関係はとてもいいですね。入職する前に1日体験でICUを見学させていただきましたが、先輩から「人間関係のよさはお勧めするよ」と言われました。実際、仕事では厳しいのですが、スタッフはとても暖かく優しいですね。先輩看護師は先生たち以上に患者様のことを考えていて、先生たちとディスカッションしています。チームワークがとてもいいので、職場の人間関係がわずらわしいと思ったことは一度もありません。
将来のキャリアビジョン
入職してまだ2カ月なので、今は勉強して吸収する時期だと思っています。将来どういうキャリを積みたいという具体的なものはまだありませんが、患者様の一言から病態の変化を読み取ったり、患者様が病気になって辛く思っていることを汲み取れるような看護師になりたいですね。