vol.153
しもふり訪問看護リハビリステーション
「しもふり?なんでお肉なの?」
初めて私達のステーションの名前を聞いた方は、たいていこんなリアクションをとります。
山手線のちょうどてっぺんに位置する駒込駅から、名勝・旧古河庭園に向かう道すがらに現れる下町情緒あふれるしもふり銀座商店街。私達のステーションは2015年4月、この商店街近くで産声を上げました。
「地域の皆さんに24時間365日いつでも安心を届けられるステーションであるために訪問看護ステーションは大規模でなくてはならない」との信念のもと、オープン後1年でスタッフ総数20名を超えるまでに成長しましたが、私たちはまだまだ成長のスピードを緩めません。
在宅分野で活躍するぞと決心してくれた看護師の皆様に「在宅っていいな!」と思ってもらえるよう、私達は日本一働きやすいステーション作りを目指しています。
24時間いつでも地域に安心を届け続けるためにはステーションの大規模化が必須であるとの経営方針のもと、現在、看護師9人、理学療法士3人、作業療法士6人、言語聴覚士1人を擁しています。ステーションの基本方針は「利用者さまのニーズに対して、最善を尽くす」です。訪問先で良いサービスを行うためには訪問スタッフが良いコンディションであることが大切ですので、ステーション内の雰囲気の良さを保つ努力をしています。自由で明るく、誰もが自分らしさを思い切り発揮できる場所だと思っています。
2015年4月にオープンしました。私は2015年9月に二代目の管理者に就任しましたが、その当時は利用者さんがほぼゼロに近い状況でした。私自身も管理者の経験がなく、事業所の立ち上げも初めてでしたので、「やった方がいい」と思える、あらゆることを必死にやってきたんです。「特指示」の利用者さんのご依頼があったときは利用者さんのご自宅近くのビジネスホテルに泊まり込んで、ターミナルの頻回訪問に対応したりもしました。一方で、経営母体が「大規模化を目指す」とのビジョンを掲げ、その実現のためにと矢継ぎ早にスタッフを採用してくれました。その結果、素晴らしいスタッフに恵まれ、地域のケアマネージャーさんから「しもふりさんに頼んで良かった」というお言葉をたびたびいただくようになりました。
私どもはご夫婦でご利用くださる方が多いんです。初めはご主人だけだったのが、子どもさんから「母もお願いします」と依頼を受けることが少なくありません。「訪問看護がこんなに良いものとは知りませんでした」と言っていただけるのは本当に嬉しいですね。現在は100人近くの利用者さんがいらっしゃいます。
利用者さんの人数、スタッフ数が急激に増えているのですが、組織の成長スピードに自分自身の成長スピードが追いつかないところがありますね。これまでは個人レベルで頑張れば、どうにかなっていたところもありますが、今後は権限を積極的に移譲して、組織としての動き方をさらに洗練させていき、大規模化に備えていかなくてはなりません。
訪問看護師は病院とは違い、一人で利用者さんのご自宅を訪問して、看護をします。一人につきっきりとなる分、利用者さんとの距離が近くて緊張しますが、頼りにされますので、そこに遣り甲斐があります。当初は訪問看護未経験者が多くいましたが、持ち前の明るさ、笑顔をもとに実際の訪問を数こなして成長してきました。「訪問経験がない」、「訪問看護の経験、技術、知識が少ない」など、未経験者ゆえの不安を感じてきたからこそ、教えられることがあるはずし、学べる環境がここにはあります。まずは、訪問看護の現場を体験することから始めてみてください。
看護師は誰もが教育や経験を通じて、その人固有の看護観を持っています。しかし、訪問看護の世界に飛び込んでくるためには凝り固まった看護観を一旦、壊す必要があるかもしれません。自分の考えや意見だけではなく、利用者さんとそのご家族を巻き込んだ看護観をその現場ごとにその都度作れる柔軟性が必要です。とはいえ、それはそれほど難しいことではありません。責任感と謙虚に学ぶ姿勢を持つ誠実な人であれば、誰もが訪問看護の現場で柔軟性を発揮できると思っています。
現在、駒込のステーションを囲む形でサテライトを展開中です。今後1年間のうちには7カ所のサテライトを出店します。北区、豊島区、文京区、荒川区を網羅する形でドミナント展開を予定しています。
皆さんの個性と才能を最大限に発揮できる環境を整えて、お待ちしています。
成田:一人の利用者さんについて、看護師とリハビリスタッフが資格の垣根を超えて相談をし合い、訪問をしています。
成田:看護師、リハビリスタッフといった、様々な職種のメンバーが同じ場に会し、元気で勢いがあることが特徴です。
当初は介護の領域に関心があったんです。しかし、母のパーキンソン病がきっかけとなり、訪問看護への興味が湧きました。看護の現場から長く離れていたので、まずは地域包括でしばらく学び、その後、訪問看護の世界に入りました。
利用の申し込みがあった方の面接、契約や利用者さんのお宅を訪問して、状態観察や必要時には入浴介助などの補正、排泄の介助、内服薬の管理などを行っています。病気を抱えながらご自宅で生活を送るうえで不安なことを解消できるよう、利用者さんご本人はもとより、ご家族の負担を軽減するケアを心がけています。
人と接するのが好きな人には魅力がある仕事だと思います。向き合う相手を全人的に見て深く付き合うことができます。医師からの指示書のもとでサービスをしますが、その中でも自分の想像や工夫でやれること、やりたいことが広がっていく感覚ですね。介護保険や医療保険の範囲でできることの制限がありますが、保険外のニーズとして、例えば旅行同行など、利用者さんにとって何ができるかについて考えるのが遣り甲斐になっています。
入職当初を振り返ると、臨床から離れていたので、知識や技術が追いついていなかったところがありました。色々な職種と連携が必要なので、コミュニケーションには気を遣いますが、その分、能力も高まっていると感じています。
利用者さんと接している時間の中で感じるのは笑顔の質が病院や施設にいるときとは明らかに違うということです。私自身の力量不足で訪問看護の仕事を続けられないと思ったこともありましたが、終末期の利用者さんのご家族から「しもふりさんを利用して良かった」、「わがまま勝手ばかり言っていたけど、今までありがとう」という声をいただいたんです。このような声がなかったら、続けることができなかったかもしれません。新たに訪問看護の世界を志す人には私が経験したことを伝え、在宅医療の価値をますます感じてもらいたいです。
祝日に勤務したスタッフに手当が付くなど、頑張った人にはそれ相応の報酬制度を用意してもらっていることはとても励みになっています。現在、サテライトを複数開設するなどで、ステーション運営が急拡大を見せていますが、働く環境の整備がもう少し充実してくれるとよりいいなと思います。
まずは「しもふり」がこの地域になくてはならないと思われる存在にしていくべく、このステーションで訪問看護の知識を蓄えて、利用者さんやそのご家族のケアに全力を尽くしていきたいです。将来はその経験を自分の故郷である青森県に持ち帰って、地元でより多くの方々と触れ合っていければと考えています。
しもふり訪問看護リハビリステーションには「皆先生、皆生徒」という言葉があります。何と言っても、私たちの仕事の一番の先生は利用者さんご本人です。増えていく利用者さんに対して、より良い支援ができるよう、ともに学び、ともに成長をしていける仲間を増やしていきたいです。