八代更生病院は昭和34年に初代理事長山田次郎先生によって創立されました。昭和47年より2代目理事長今村泰雄先生がご就任されました。平成4年9月から、今村理事長の時に院長として就任致しました。それまでは熊大神経精神科で宮川太平教授のもと医療・研究・教育の研鑽に励んでいました。院長に就任後は今村理事長のもと、単科精神科病院として、いかに地域精神科医療へ貢献すべきかと考えて努力してきました。平均在院日数を減らすために長期入院患者さんの退院促進をはかり、地域精神科医療の充実のためデイケア、グループホーム、訪問看護を押し進めてきました。それに伴い外来患者延数は平成4年と比べると7~8倍となりました。平成16年、日本医療機能評価機構受審を機に精神科療養病棟に加え、認知症治療病棟や精神科急性期治療病棟を病床機能分化として施設基準を取得してきました。幸いなことに、新進気鋭の医師スタッフや、若手の看護スタッフ、コメディカルスタッフ(精神保健福祉士、作業療法士、管理栄養士)、医事課スタッフにめぐまれ、多様な精神疾患(身体合併症、アルコール嗜癖、思春期など)への治療対応環境ができました。八代更生病院のこれからの発展の基礎がやっと出来てきた、平成25年11月30日に、残念なことに、今村理事長がご逝去されました。それまで理事長代行であった私が、平成26年1月より3代目の理事長に就任致しました。今村先生の教えである、患者さんに親切に、そのご家族にも親切に、職員に優しく、医療では安心・安全を基本とする病院運営を引き継いで行く所存です。どうかこれからも八代更生病院を宜しくお願いします。
あたたかさと癒しの医療
地域社会に信頼される精神科医療をめざし、患者様に安全で安心される質の高い医療を提供します。
人と人との関わりを尊重し、「おもいやり」の心で質の高いケアの提供を目指します。
ラダーシステムを採用していますが、運用は難しいですね。看護師が勉強したい、成長したいということをいかに感じて、その目標をいかに支援していく体制を作るのか、精神科を経験していない中途採用の看護師をどうサポートするかが大事です。管理者研修などにも行って勉強していますし、今後もより改善していきたいと思っています。
ほかの病院で60歳の定年を迎えて、当院に再就職した看護師もいますし、幅広い年齢層の看護師がいますので、状況や能力に合わせた教育体制を整えているところです。ベテランの看護師の価値観や経験を尊重し、配慮しながら支援しています。
新しい精神科の治療は学校で習ってきたこととは違います。当院は認知症の疾患別に応じた看護を行っています。治療抵抗性の統合失調症の治療としてクロザリルという薬や中性型電気通電療法を取り入れていますが、個人病院でこういった治療をしているところは熊本県内にはほとんどないので、きちんと教育しています。
そして、地域でいかに生活できるようにサポートしていくかということも大事な教育ですね。知識を看護に落とし込んでいくためには分かりやすく説明しないといけませんので、私の役割はそこにあると思っています。
私は工業高校を出ているのですが、卒業の頃は就職難だったんです。そのときに親の知り合いに男性看護師がいることを知り、人のために働くのもいいかなと思ったのがきっかけです。地元に就職口もなかったですし、気軽な気持ちで看護学校に行くことにしました。しかし、学校に通っている間に近い人が亡くなったり、老人施設で働いているときに看取りをしたりという過程の中で看護観ができていったように思います。
八代更生病院には看護学校の同期が6人ぐらいいたこともあり、私もこの病院の話はよく聞いていました。私は自分がやりたいことが見つからなかったのですが、部長が科長時代に指導や動機付けをしてくださって、やりたいことが明確になっていきました。
精神科の医療も変わりましたね。昔は病院が患者さんの生活の場でしたが、今は地域での生活支援に移行していますので、新しい遣り甲斐が生まれてきました。
私は准看護師学校に2年、正看護師を目指すための看護学校に3年行きましたが、その頃は志が高くなかったので、いい学生ではなかったですね(笑)。途中で辞めようかと思ったこともありましたが、同期に支えられました。同期には悩みを率直に言っていましたし、兄貴分的な存在の同期がいて、親身になって相談に乗ってくれましたよ。男性が少ない時代でしたから、密接になったんでしょうね。同期とは今もいい関係が続いています。
看護協会の管理者研修には多くの看護師を派遣しています。精神科の個人病院では珍しいと思いますよ。サードはまだいませんが、セカンドが3人、ファーストが1人と、役職に就いている人はほとんど行っていますね。管理者研修では、管理の仕事をする中での課題を持って行きます。私は目標管理にしました。看護師が目標を持てなかったり、見出だせなかったりするときに、どのようにサポートするのかということです。これについて、ファシリテーターからアドバイスを受けたり、講義を受講しました。
当院の最大の特徴ですね。子育てへの配慮が十分だと思います。子どもさんのことで休みが必要な場合など、家庭の事情を考慮して対応しています。未就学の子どもさんがいる看護師が多いので、配慮が必要ですね。夜勤できない看護師を配置転換することもありますよ。
私も共働きで、子どもがまだ小さいので、風邪を引いたりすることがよくあるのですが、周りのスタッフに助けられています。
看護の仕事をしたいけれども、家庭を優先しなくてはいけないという方もいらっしゃるでしょう。しかし、私たちはそういった方のサポートが十分にできますので、遠慮なく、おっしゃってください。精神科医療は随分と変わってきましたし、今は非常に重要な領域を占めていますので、新しい精神科医療を学びたい、触れたいという方、特に若い力を歓迎します。
看護師をする前は全く別の仕事をしていましたが、自分が一生の仕事として本当にやりたいことは何かをいつも考えていました。そんな中、当時29歳だった弟がくも膜下出血で亡くなったのです。弟の入院した病院で、患者さんのために献身的に働く看護師さんの姿が脳裏に焼き付き、看護師を目指すきっかけとなりました。
弟の死をきっかけに、33歳で看護学校に通い始めました。看護学校は熊本市の上熊本にあり、子育てをしながら2年間通っていました。私が看護学校に入学したとき、子どもが中学1年生と高校1年生で、私を含め、皆がそれぞれ1年生でした。今思うと、子どもたちや夫に迷惑をかけましたね。30歳を超えていましたので、若い人達についていくために2倍、3倍と勉強しました。途中で挫折しそうになったときに、子どもが「お母さん、今辞めたら、今まで1年間頑張ってきたことが無駄でしょ」と励ましてくれたのを今でも鮮明に覚えています。そのお蔭で諦めずに、最後まで頑張ることができました。回り道をして看護師になりましたが、色んな友達もできましたし、看護学校での経験が今の私に非常に役に立っています。
当院の病床数は260床で、精神科と心療内科を標榜している病院です。病棟が全部で5棟あります。1病棟が2フロアで、2階は寝たきりの方と合併症をお持ちの方が入院している病棟です。さらにその上が開放病棟となっています。2病棟は60床あり、入院患者さんの年齢層も比較的高齢で、長期的な療養が必要な患者さんの病棟です。3病棟が急性期病棟で、最も入退院が多い病棟です。2階が閉鎖病棟、3階が42床の開放病棟で、統合失調症や認知症の患者さんが入院しています。5病棟は認知症治療病棟です。6病棟は54床あり、長期入院の必要な方で、興奮の激しい方や治療抵抗性が多い患者さんたちが入院されています。
看護師をしている間は看護観を語ることは難しいですね。看護師になってからずっと患者さんに接していますが、自分が看護を行う中で考えたことが看護観でしょうか。自分がこの患者さんにとって何ができるのか、病院ができることはどんなことか、患者さんやご家族は何に困っているのかということを常に考えてきました。理論家からすれば、ナイチンゲールは古いのかもしれませんが、やはり基礎はナイチンゲールですよね。その後、オレムなども出てきましたが、私は病気によって障害された部分に私たちがどれだけ手助けできるのかを考えていきたいです。精神科であれば、社会でどのように生活していくのかという視点も大事ですね。偏見の中で生きることはとても大変です。患者さんに幻覚や妄想があっても、社会の中で生活できるように、そして偏見を少なくできるようにと思っています。
当院はラダー制を取り入れています。新卒の看護師が入ってくることはほとんどなく、中途採用がほとんどです。教育は師長や主任クラスが担当します。大きな病院のように、何十人もの看護師が一度に入職してくるわけではないので、人数が少ない分、行き届いた教育ができるというメリットがあります。中途で入職される看護師さんは経験があったとしても、病院ごとで多少は違う風土がありますから、余計な緊張感をできるだけ排除するために、プリセプターを付けて、マンツーマンで指導を行っています。
精神科は目に見えない部分の看護です。その中で特に患者さんから暴言を吐いたり、払いのけられたりすると、入職したばかりの看護師はかなり傷つくことがあります。そのため、最初に疾患について、よく理解をさせるということを心がけています。また、精神科の患者さんに対する偏見を持った人もいるので、そういったことをなくしていく教育を心がけています。
看護師一人一人に対して、自分で考えて行動することも言い聞かせています。具体的に言いますと、注射や処置をする場合、何のためにそれをするのか考えて理解していなければいけません。患者さんは一人一人違うので、マニュアル通りに行った行動と自分で考えて取った行動は大きく違います。現場ではマニュアル通りにいかない場面や状況は常に起こります。そういうときにマニュアル通りの対応しかできない看護師は失敗したときにすぐ他人のせいにします。自分で考えて対処できる看護師は自分の取った行動に対して、きちんと説明ができ、責任を持っています。仮にそれが結果的に間違っていたとしても、考えて行動したというプロセスが大事だということを常に教育しています。
コミュニケーションも非常に大事です。特に医師からの指示に対して疑問が生じたとき、すぐに質問をして疑問を解決し、納得したうえで行動するように伝えています。確認をせずに行ったがために、重大なミスに繋がる可能性もあります。確認作業をすることによって、患者さんに対して安全で安心な医療を提供することに繫がると私は思っています。
精神科にはまだ偏見が強いところもありますが、昔と比べると随分、身近な存在になってきたと思います。当院に面接に来られる看護師さんからも「すごく明るい雰囲気ですね」、「想像していた雰囲気と違いますね」とよく言われます。精神科は外科のような派手さはない分野ですが、患者さんや家族の方と接していく中で自分自身が成長することができますし、状態が良くなって退院される患者さんから感謝やお礼の言葉をいただくことが励みにもなり、大きな遣り甲斐を感じる部分でもあります。
看護師を目指したきっかけについて、お聞かせください。
子どもの頃、風邪を引いて、病院に行ったときに看護師さんから優しく接していただいて、とても安心感を得られたことが今でも印象に残っていまして、そのときに看護師の仕事に対して、魅力を感じたのがきっかけです。看護師に対する私のイメージは何でも気兼ねなく相談できる母親のような存在なんです。患者の病気を治療するのはもちろん医師の役目ですが、患者さんから慕われ、頼りにされる看護師の仕事をやってみたいと思いました。実際に看護師を目指して勉強を始めたのは高校生のときです。
看護学校時代についてお聞かせください。
看護学校には3年通っていました。学校に行きながら、八代更生病院で仕事をさせていただきました。当時は仕事と勉強の両立で大変だった記憶しかないです。ただ、こちらで仕事をしながら看護学校に通われていた先輩方に相談に乗ってもらったりしたことがあったお蔭で、今の自分がありますね。看護学校はこの学校のすぐ近くにあります。学校はお昼からで、授業が終わったら病院で仕事をして、夜勤を終えてから自宅に戻って、また学校に行くというローテーションでした。
当時はクラスに30人ぐらいいまして、男子学生も少しいましたが、学生のほとんどが女性でした。学生時代に一番大変だったのは病院実習でした。総合病院で1年間かけて全ての科をローテーションします。現場で患者さんとうまくコミュニケーションができず苦労しました。学生のときはまだ患者さんとの距離感もうまく取れず、無理に話しかけようとすると患者さんの方が引いてしまったりと、なかなかうまくいかず、苦労しました。実習を続けているうちに患者さんと会話ができるようになり、逆に患者さんの方から声をかけてもらえるようになりました。患者さんとのコミュニケーションだけでなく、採血などの技術も身について自信に繋がりました。
こちらの病院を勤務先として選んだ理由について、お聞かせください。
高校を卒業してまず入った准看護学校に行っていたときにこちらの病院で実習をさせていただいたのがきっかけです。精神科が一番難しいと思ったんですが、あえてその精神科で仕事をすることで自分の成長に繋がると考えました。精神科の患者さんとコミュニケーションを取るのは容易なことではありません。私にとって一番苦手なことでしたが、それを克服するために、こちらの病院を選びました。
現在のお仕事の内容について、お聞かせください。
認知症の治療病棟で仕事をしています。名前の通り、認知症の患者さんばかりですが、症状の重い患者さんが主に入院されています。その患者さんの症状をいかに安定させて、退院させるかという仕事です。日常生活の中で患者さんの精神状態を観察するわけですが、特に患者さんが何をしたいと思っているのかを考えています。例えば、家族に会いたいと思っている患者さんがいれば、話をまず聞いてあげて、気持ちを落ち着かせてあげています。一度、退院されてもまた入院される方もいますし、症状がさらに悪化して再入院される方もいます。
どんなところに遣り甲斐を感じていますか。
状態の悪かった患者さんが落ち着かれて退院されることになり、感謝の言葉をかけてくださったときがとても嬉しいです。認知症は完治しない病気ですが、薬によって進行を遅らせることはできます。ただ薬だけに頼るのではなく、私たち看護師が患者さんとコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことにより、患者さんの状態を良い方向に導くことができたときに仕事の遣り甲斐を感じます。
こちらでの病院勤務で、一番勉強になっていることはどんなことですか。
精神科特有の疾患を知識として身に着けることもできますが、ほかの診療科の患者さんと比較すると、精神科の患者さんとコミュニケーションを取ることが非常に難しい仕事であり、私自身が苦手とする部分でもあったわけですが、勤務する中で徐々に克服することができました。慣れるまでにかなり時間はかかりましたが、患者さんが求めていることを常に考えながら接しているうちに、患者さんが心を開いてくれるようになり、会話もうまくできるようになりました。
職場の雰囲気について、お聞かせください。
張り合いがあり、活気に満ち溢れている職場環境です。一人一人が厳しさも持っていますが、どんなときでも悩みや相談に乗ってくれます。先輩看護師の中に仕事と家庭の両立をきちんとされている方がいて、自分が子育てで悩んでいたときでも、親身になって相談に乗ってくれた人がいました。また、病院の行事に関しても、とても団結力があります。日頃から看護師同士が良い関係が築けていなければ、いざというときに力を発揮できないですね。
ともに働きたい看護師の人物像はどんな方ですか。
常に患者さんのことを考え、笑顔で優しく接することができる方です。たとえプライベートで嫌なことがあったとしても、患者さんの前では決して顔や態度に出さないことは看護師にとって当たり前のことですが、患者さんのことを自分の家族と同様に、思いやりを持って接してあげることができる方はきっと職場を離れた普段の生活の場においても自然とそういう振る舞いができる方だと思いますし、そういった方と仕事をしたいです。
将来の目標をお聞かせください。
今は認知症患者さんのケアが楽しいので、仕事の幅を広げるというよりも、今の仕事をさらに深くつきつめたいと考えています。できれば将来、認知症の認定看護師の資格が取れればいいですね。また、患者さんのケアだけではなく、患者さんのご家族に対しても、気を配ったり、信頼関係が築けるような看護師になりたいです。
看護学生や転職を考えている看護師さんへのメッセージをお願いします。
自分の好きなことをする方が長続きすると思っていましたが、私の場合はあえて自分が苦手とすることをチャレンジすることによって、逆に好きになっていきましたので、転職を考えている看護師さんにも参考にしていただければと思います。自分の弱いところを克服すれば、自信がつきます。ただ、どうしても環境が自分に合わない場合は別の道を選択すればいいですよ。想像と実際にやってみるのとでは違いますので、新たな可能性を見出す一つのきっかけにしていただければ嬉しいです。まずは病院見学にいらしてくださいね。