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Vol.7  外国の看護師資格習得を目指し留学経験のある看護師 ヒンツ 千恵さん(仮名)

外国の看護師資格習得を目指し留学経験のある看護師
ヒンツ千恵さん (仮名)

ヒンツ千恵さんは3年前、看護師資格の習得を目指してオーストラリアに留学した経験を持つ。2年ほどの留学を終えて、今年2月に帰国し、現在は大阪府内の急性期病院に勤務している。
ヒンツさんに留学に関する様々な話を伺った。

留学前のお仕事についてお話ください。

 大阪府内の公立病院で働いていました。CCUから回復期病棟に移った循環器疾患の患者さんの看護が中心です。もともと「人が好き」な性格から、看護師を志したので仕事には遣り甲斐を感じていました。

それで、何故、留学しようと決心したのですか?

 かっこいいきっかけがあったわけではないんです。青年海外協力隊のような組織でのボランティアに憧れがあって、英会話の学校に行き始めました。最初は3単現のSも忘れていたんですよ(笑)。そのうち、だんだん英語の勉強が楽しくなっていきました。そして30歳になって「何かを変えたい」という思いが強くなって、留学しようと思ったんです。

留学先をオーストラリアに決めた理由は何ですか?

 何回か旅行に行ったことがありましたし、友達もいて情報を集めやすかったというのが大きな理由です。通っていた英会話学校の現地校がゴールドコーストにあったので、まずそちらに入校しました。その語学学校では英語の習得と、看護師資格を取得するための情報収集を行いました。半年間在籍して、大学へ編入しました。

そしてセントラルクィーンズランドユニバーシティーに入られたんですね?

 はい。看護学部へ編入することができました。ゴールドコーストを離れて、ロックハンプトンという街に移りました。オーストラリアでRA(レジスタードナース、日本での正看護師に相当する)の資格を取得するには4年制の大学で学士号を取ることが必要です。大きな大学なので他の学部には日本人留学生もいたのですが、看護学部に入った日本人は私だけでした。寮生活を送ったのですが、朝から夜まで英語だけで暮らすというのは辛かったですね。寮では食事がバイキング形式だったのですが、美味しくなかったです(笑)。もともとお肉をあまり好きでなかったので、サラダばかりを食べていました。日本から味噌汁などのインスタント食品を持ち込んだのはよかったなと思います。

講義の内容に関してはいかがですか?

 レクチャーの場合は前もってテキストを読んで予習しておけるので、そんなに大変ではないのですが、ディスカッションにはついていけませんでした。単語なら思いつくのですが、文章を話すのは難しかったです。よく言われることですが、日本人はディスカッションをすること自体に苦手意識がありますよね。受け身になってしまいがちです。オーストラリアの学生は、間違っていることでも自信を持って意見を言います。それはすごいと思いました。
 休みの日もリポートの作成があって、ほとんど遊べませんでした。勉強しないとついていけないですから。日本語でもリポートを書いたことがなかったので、英語でのリポートはとても苦労しました。平均睡眠時間は2時間ぐらいでした。

看護実習も経験したそうですね。日本の看護学校との違いについてお聞かせください。

 日本の学生は看護実習でも受け身の姿勢ですね。オーストラリアの学生は積極的に仕事を見つけて能動的に行動するという印象を受けました。そして先生が実習生を一人前の看護師として扱ってくれることに初めは驚きました。日本よりも看護師にかかる責任は大きいと思います。先生方は私が日本で看護師だったことをご存知なので「問診してみなさい」とか「カルテ書きなさい」といったことを勧められることが多かったです。カルテの記入は私の英語力では無理でした。
 体を拭く、傷の消毒をするといったケアの仕方については、日本との違いはなかったですね。外来検査での受付は楽しかったですよ。

患者さんとのコミュニケーションはいかがでしたか?

 私はオーストラリアの歴史を勉強しないままで行ってしまったので、高齢の患者さんが「昔話」をされると理解するのが難しかったです。留学する国のことについて、歴史や地理などある程度は調べていく方がいいですね。

どのくらいの期間、大学で勉強したのですか?

 結局、半年で止めました。講義についていけなかったというのが正直なところです。まだ語学力が十分ではないと思ったので、また語学学校に入校することにしました。今度はブリズベンに移りました。オーストラリアで看護師免許を取るためには、アイエルツ(アメリカのTOEFLのようなスコア)で7ポイントが必要です。これは、ほぼネイティブのレベルです。そこまで到達することはできませんでしたが、勉強したということは自信になりました。

日本に帰国しようと思ったのは何故ですか?

 ブリズベンの語学学校には半年間通ったのですが、ちょうど今の夫と結婚することが決まり、ビザの有効期限も切れるところだったので、夫と一緒に日本に帰ることにしました。
 夫はオーストラリア人なのですが、友達のご主人の友達ということで知り合いました。夫は以前ワーキングホリデーで東京に1年間ほど滞在したことがあり、日本で生活することには迷いはなかったようです。オーストラリアからインターネットで日本での職を探し、英会話学校で講師の仕事をすることになりました。
 私はホスピスのある病院で働きたかったのですが、経験がないと難しいようで、留学前と同じように急性期病棟に勤務することになりました。二人とも割とスムーズに仕事が決まったのでよかったです。

ご主人は日本での暮らしに、すぐにお慣れになりましたか?

 やはりカルチャーの違いがあるので、最初は戸惑うこともあったようです。今は日本語も結構話せるようになってきました。私が関西弁を仕込んでいます(笑)。外国人が「女性を誉める」というのは本当で、誉められると嬉しいですね。とにかく話し合うことが大切だと思うので、辞書を片手に生活しています。

今後、また留学してみたいですか?

 オーストラリアの看護師資格は欲しいですね。看護に関してはアメリカの方が先進国ですので、アメリカで勉強したいとも思っています。でも、今は日本で働くことを優先して考えています。循環器に関しては、ずっと経験して面白さを感じてきたので、今後もさらに深めていきたいです。

留学を希望されている看護師さんへアドバイスを送って頂けますか?

 語学の習得には覚悟を決めて、強い意志を持つことが必要です。頑張ってほしいですね。

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